海外経済

経済回復は早く金融リスクへの警戒を:ベン・バーナンキ
2020年3月27日

ベン・バーナンキ元FRB議長が、コロナ・ショックからの経済回復は素早いものになる可能性が高いと予想し、合わせて低金利が生み出す金融リスクへの警戒を促した。


いいニュースは、こうなった時に2007年よりはるかに強い銀行システム、はるかに健全な金融システムを有していたことだ。
だから、それが緊張に耐え、私たちを救い、前向きな力となって正常な状態に戻してくれると期待している。

バーナンキ氏がCNBCで、コロナ・ショックからの立ち直りは速いものになると予想した。
同ショックの過酷さ・特殊性を認めた上で、一たびウィルス退治にめどがつけば、その後の回復過程は速いはずという。
各所の閉鎖は経済活動に大きな影響を及ぼすため、確実に第2四半期、場合によっては第3四半期も景気後退となるが、「とても急激で短い景気後退」ですむ可能性があるという。

速やかな回復が可能になるかどうかはいくつかの要因によるという。

  • 封じ込め等医療上の解決にどれだけの時間がかかるか。
  • 閉鎖の間、健全な経済を温存できるか。

つまり、短期間でウィルスを封じ込め、その間、様々な経済主体を悪影響から守ることができれば、ウィルスが去った後、経済はすぐに立ち直ることができる。
一方、バーナンキ氏はリスク・シナリオにも言及する。

「同時に、倒産、レイオフ、閉鎖の間の失業によって正常な状態に戻るのに時間がかかる可能性もある。」

バーナンキ氏は、公衆衛生が最重要課題だとし、それさえ解決に向かえば、経済を立て直す方法はわかっていると話す。
このため、コロナ・ショックがリーマン危機や大恐慌のような危機に発展する可能性は低いと指摘した。

FRBの政策対応について尋ねられると、バーナンキ氏は正しい政策が進められていると称賛した。
社会的隔離が行われている現在、景気刺激策としての金融政策は機能しないとし、その要素は隔離が終了後に効き始めると解説した。
FRBの現在の政策は、貸し手としての機能を活用したものだという。
クレジット市場の機能不全を回避し、危機後まで経済主体を支えることに主眼があると話した。

対応策が財政悪化につながる点については、長期的課題だとし、それを理由にやるべきことをやらないという話にはならないと主張した。
米国債市場の需給問題についても「ドイツ・日本と戦わなければならなかった」第2次大戦時を引き合いに出し、楽観的な見通しを語った。

「最終的にいくらか戦争のつけを払うことになったが、今は大きく行くのが正しく、市場は米国債(供給増)を吸収してくれると思う。
FRBは市場が潤滑に機能するよう支援するだろう。」

コロナ・ショックへの対処においてケチケチしてはいけないというのはコンセンサスだろう。
一方で、米国債の需給問題、つまり金利・インフレの上昇を心配する市場関係者は決して少なくない。

金融政策が現在の超低金利環境を生んだのではないかとの問いに、バーナンキ氏は持論どおり反論した。

低金利は・・・懐疑的な人がいることは理解しているが・・・事実を言えば、世界中の低金利は一義的には金融政策による現象ではない。
世界中の金利は1980年代から低下してきた。・・・
以前話したとおり、世界で起こっているのは、長寿命化・所得増加など様々な理由による貯蓄余剰だ。

バーナンキ氏は以前から、金融政策を経済に寄り添うものと表現している。
種々の構造的変化が経済の中立金利を低下させた。
中央銀行は、雇用・インフレの状況に応じて、その中立金利のある時は上、ある時は下に政策金利を設定する。
だから、金利とは政策金利が決めるものではなく、経済が決めるものだという考えだ。

これも議論の多い話題だ。
市場関係者の中には、金融緩和が潜在成長率を押し下げ、中立金利を下げてしまうと主張する人も少なくない。

バーナンキ氏は主張する。

「金融政策が正常なレベルであっても・・・以前FRBが利上げした時には正常なレベルに近づいたが・・・金利ははるかに低いままだろう。」

これも異論の多いところだろう。
「正常なレベルに近づいた」とは、2018年第4四半期のことだろう。
この時、市場は荒れ狂い、FRBは金融緩和への回帰を強いられた。
市場が荒れた理由は、同年10月に長期金利が上昇の気配を見せ、さらに上昇するとの市場期待が高まったためだ。
「金利が低いまま」というバーナンキ氏の予想は、少なくとも短期的には当てはまらない。
(もちろん、金利上昇を放置した場合に、景気が悪化し、結局長期金利が低下すると主張することはできる。)
ちなみに当時の長期金利はまだ《潜在成長率+インフレ》をはるかに下回る水準だった。

議論の成否はともあれ、バーナンキ氏は現実的な対応を呼び掛けている。

私たちはしばらくは低金利と付き合わないといけない可能性が高い。
そして、私たちは金融リスクについてもとても警戒しないといけないし、FRBは以前より詳細に見ていなければいけない。


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