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経済回復のタイムフレーム:ローレンス・サマーズ
2020年4月6日

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が、コロナ・ショックからの立ち直り方についていくつか注文をつけている。


確信はないものの、公衆衛生をコントロールできれば、金融危機や通常の景気後退の後よりも迅速に正常な状態に回復するだろう。・・・
感染率が確実に低下する時から2-3週間すれば、制限を取りやめる過程を始められるだろう。・・・
そうなれば、回復はかなり早いと思う。

サマーズ氏がVanity Fairのインタビューで、自ら「楽観的」とするコロナ・ショックからの回復シナリオを話した。
同氏によれば、現在米国の労働力の約1/3が稼働をやめているという。
大きな数字ではあるが、原因の性質から、この稼働停止は「冬のケープ・コッド」や夜の睡眠のようなもので、一たび原因が解決すれば、速やかに経済は回復を始めると期待できるという。
ただし、時間は少しかかりそうだ。

「この秋にほとんどの地域で学校が再開できるなら、GDPは2021年半ばまでに2019年第4四半期の水準まで戻ると予想している。・・・
2021年末までには比較的正常な失業率が期待される。・・・
大学についていえば(秋の再開の確率は)50-50程度だ。」

米国の学校の新年度は秋から始まる。
新年度が秋に開始できない確率がまだ半分あるというのだ。
これは、現状の市場の織り込みよりやや悲観的に聞こえる。

サマーズ氏は、足元の対策について、迅速に必要なお金を必要な人に届けることが重要と強調する。
生活に困っている人とともに、コロナウィルス撃退にあたっている人たちだ。

その中で、州立病院で起こっている、とても心配な一側面に言及している。
州財政のひっ迫から、医師や看護師の給与がカットされたり不払いとなっていたりする事例があるのだという。
その理由が悲惨だ。
学校が閉鎖され、州がEラーニングに投資せざるをえなくなった。
その財源の捻出のため、医療従事者の給与まで手がつけられているのだという。

サマーズ氏が心配するのは、迅速にお金を配るのが難しくないか、お金を出す意思決定が迅速に行えるかだという。
特に前者は、財務長官経験者ならではの心配だろう。

「莫大な金額を迅速かつ許容できない水準の詐欺にあうことなく数百万の小企業に配る方法を見出すのは、とても困難だろう。」

迅速に届けるという要件と詐欺にあわないという要件はなかなか両立しにくい。
そのため一律でお金を配れという意見が出てくるが、仮に財源が限られているなら、おそらくそうだが、必要な人に十分な金額が渡らなくなってしまうだろう。

サマーズ氏は、必要な金額がさらに増える可能性を示唆する一方、コロナ・ショックによる損失が現実の損失である点も強調する。

「こうした損失は、政府が借金したりFRBが紙幣を印刷したりしても無くなるものではない。
いつかはつけが回ってくる。」

現実の損失だから、理に適った負担が行われなければならない。
何でも政府、つまり納税者が負担すればいいわけではない。
不用意に救済の輪を広げれば、リーマン危機後と同様、国民からもっともな批判を受けるだろう。

サマーズ氏は、救済の主目的が「すべての経済的苦痛、特に株主の経済的苦痛を和らげる」ことではないと明言する。
主目的は「労働者を保護し経済の供給力を維持させること」だ。
その点において、投資家は資本主義や法律のルールにのっとった負担をすべきと説く。

「資本主義経済には様々な仕組みがある: DIPファイナンス、貸付、企業再編。
これらは無駄の多い清算を避けるよう設計されている。・・・
株主が現金や米国債の保有者より平均して高いリターンを得る理由とは、厳しい時に列の最後尾に並ぶことに合意したためだ。」

サマーズ氏は、資本主義のルールを重んじる主張をする一方、それから逸脱する考えも示す。

私はピザ店のオーナーや従業員を救うのには賛成だが、大企業の利益が不測の事態で大きく減ったなら、企業のオーナーがまずそのリスクを負うべきだ。

どのオーナーが救われるべきかは、理論的には、事業内容・規模によって区別されるべきではなかろう。
清貧な大企業オーナーもいるだろうし、強欲で金満な零細ピザ屋オーナーもいるだろう。
それがこの問題の難しさだ。

コロナ後の米社会に大きな変化は起こるのかと尋ねられ、サマーズ氏はYesと答えた。
人々の「哲学」に大きな変化をもたらすだろうという。

「私はこれがレーガン-サッチャー流の自由主義の波を終わらせるかもしれないと考えている。
この後、サッチャーのように『コミュニティなど存在しない』という人はいないだろうし、政府は解ではなく問題だと十把一絡げにいう人もいないだろう。」

最後にサマーズ氏は、分断された米社会は再び融和できるかと尋ねられた。
世界銀行でチーフエコノミスト、クリントン政権で財務長官、リベラルの牙城ハーバード大学で学長、オバマ政権で国家経済会議委員長を務めた天才は、魔物のようにインタビュアーに魔法をかけている。

肘を当てての挨拶はするよ。
握手するかどうかは、この記事を(共和党政権に)媚びるように書くかどうかによるだろうね。


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