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経済・市場はV字・U字回復へ:レイ・ダリオ
2020年3月5日

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が、新型コロナウィルスの経済・市場に対する影響、対処のヒントを書いている。


私に大きな強みがないことには賭けたくない。
どんなポジションも大きくしたくない。
どう賭けるのかということより、大きなわからないことに対してどうやって自分を中立にするかを追求したい。

ダリオ氏が自身のSNSで、投資における従前からの「全体的な見方」を説明した。
同氏の基本方針は明確だ。
勝てると思う時に賭け、そう思えない時にはポジションを中立にする。
新型コロナウィルスは後者であり、この先ウィルスの問題がどちらに転ぼうとも影響を受けにくくなるようポートフォリオを組み立てているのだ。

ダリオ氏は以前、新型コロナウィルスのリスクが誇張されているとし、リバウンドを予想していた。
それから問題は深刻化したが、それでも先行きの見通しについては従前の見方を継続している。

ウィルスに対する反応(例えば『社会に距離をとらせること』)は(経済に)大きな短期的な低下をもたらし、その後リバウンドするだろう。
これはおそらく大きな持続的な経済的影響は及ぼさない。
実際、歴史が示すのは、大きな死亡者数でさえ持続的な経済・市場への影響より心理面への影響が大きかった、ということだ。

ダリオ氏は、ワースト・シナリオとして約100年前のスペイン風邪(世界の人口が18-20億人だった時代に1億人近い死者を出したと言われる)のようなものを想定しているようだ。
リバウンド予想はそうしたケース・スタディによる判断なのだろう。

エコノミストの中には、今回のコロナ・ショックが、世界の脱グローバリゼーションを助長するとの指摘をする人が多い。
ダリオ氏の意見は、そうした意見に反するものと考えるべきではない。
なにしろ、同氏は従前から脱グローバリゼーションの動きを誰よりも心配していいた人だからだ。
ダリオ氏からすれば、今回のウィルスは従来からの大きな流れから見れば小さなノイズにすぎないのだろう。

経済がリバウンドするから、市場も同様の動きをするとの予想になる。
ダリオ氏は(確実とは言えないと断った上で)ほとんどの企業の財務数字がV字・U字回復するだろうと予想する。
しかし、ここで考えるべき2つの現象があるという。
1つは合理的な行動、もう1つはやや不合理な行動だ。
合理的な行動とは、低金利の中でレバレッジを大きくかけている企業が多く、そうした銘柄を市場は大きく押し下げるだろうということ。
これは理屈通りの行動だ。
一方、やや不合理な行動とは、市場がやや乱暴に全部を押し下げる可能性だ。

市場は、おそらく一時的ショックに耐えられる企業、耐えられない企業を分けて考えないだろう。
売上高への一時的打撃に必要以上に注目し、信用面のインパクトを軽く見るだろう。
例えば、キャッシュ・リッチで大きな一時的経済的打撃を受けた企業はおそらく、短期債務を多く抱えるが経済的打撃を受けなかった企業と比べて、過大に打撃を受けるだろう。

ダリオ氏は決して投資推奨をしているわけではない。
しかし、事実上そういうメッセージになっている。
バランスシートが健全で、今回の混乱に耐え抜くことはできるが、ウィルスの影響を大きく受けてしまった企業。
こういう銘柄が割安になる可能性を示唆したものだろう。

ダリオ氏は、もう1つ興味深い可能性を述べている。
同氏は新型コロナウィルスを「100年に一度の破滅的イベント」と考え、これがテール・リスクを発現させる可能性に言及している。
テール・リスクを取りながらカバーしていない経済主体、例えば

  • 新型ウィルスについて再保険をかけていない保険会社
  • 大きくアウト・オブ・マネーのオプションを売っていた人

が窮地に陥ると予想している。

経済政策については、金融政策はほとんど役に立たないと指摘。
FRBが利下げしても株高とならない一因にも触れている。

すべての国について利下げが刺激策になると期待すべきでない。
利下げ(効果)のほとんどは、株式やほとんどの資産の価格の元となる債券利回りが低下した時にすでに済んでいるのだ。

米市場が急落した時、米長期金利はさっさと急低下した。
世の中に短期金利で資産価格を計算する人は皆無だろう。
長期金利はとっくに下がっているのだから、短期金利を引き下げたところで(イールド・カーブの逆ザヤこそ解消すれど)資産価格には理論的に関係のない話だ。

ダリオ氏は経済対策について、幅広い範囲に拡張的な政策をとるのではなく、「債務/流動性の制約を受けている主体」にターゲットを絞り込んで「協調的金融・財政政策」を講じるべきと述べている。

ダリオ氏は、金の亡者のような行動に走り勝ちな投資家に向けてか、心温まるアドバイスで締めくくっている。

あなたが良くケアすべき最重要な資産は、あなたとあなたの家族だ。
投資と同様に、ワースト・シナリオを想定し、それから身を守ることを祈っている。


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