ハワード・マークス
 

経済は良すぎ、資本市場は寛大すぎる:ハワード・マークス

オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、ディストレスト債投資の現状を率直に語っている。
現在は魚がいない状況だが、この先チャンスも起こりうるという。


「現在チャンスはとても少ない。
『チャンスを見つける』という言葉遣いさえしないほどだ。
現在ディストレスト債への投資は死闘だ。」

マークス氏がBloombergで、本業のディストレスト債投資の市場環境を語っている。
不良債権等に投資するディストレスト債投資は、ある意味で究極のバリュー投資と言えるかもしれない。
そのビジネスが成り立ちにくくなっている。
マークス氏は口にしないが、その背景にはFRBの非伝統的金融政策があるのだろう。
同氏は、チャンスが枯渇している理由を語っている。

経済は良すぎ、資本市場は寛大すぎる。
ある企業が困難に陥っても、資本市場は喜んで救済してしまう。

景気を金融・財政政策が支え、資本市場には行き場がないほど流動性が供給されている。
各国の金融・財政政策は景気の波を平準化するのではなく、景気後退を駆逐することを目指しているようにさえ見える。
こうした政策が続く限り、マークス氏のように不良債権を買う投資家は開店休業になってしまう。
これは程度の差こそあれ、市場サイクルを重んじるバリュー投資家全般に言える話かもしれない。

「どこにチャンスがあるかを話せば、視聴者に誤解を与えてしまう。
チャンスは実際のところ存在しない。」

この分野の草分けが降参状態なのだ。
マークス氏は昨年、来るチャンスに備え約85億ドルのディストレスト債ファンドを用意したと話していた。
当時から投資難をこぼしていたが、今もほとんどキャピタル・コールしない状態が続いているという。

マークス氏は、現状の米経済をこう診断する。


現在がバブルだとも、2008年のようなバブルに向かっているとも思わない。
リーマン・ブラザース倒産後の2008年第4四半期のようなパニック、世界金融危機が到来すると信じる理由はない。

危機到来説を退ける、概ね前向きな見通しと言えるだろう。
次に来る景気後退は通常の景気後退になる可能性が高いという含意だろう。
では、危機ではないからマークス氏のチャンスも小さいのか。
どうやらそうとも限らないようだ。

しかし、莫大な債務が発行されており、その債務を買う投資家間の熾烈な競争がある。
この競争により(債務の)質や安全性は看過されている。
このため、過去5年余りリスクの大きな攻めた債務が発行されてきた。
これが経済軟化と合わされば、大きなチャンスになるだろう。

これは幅広い投資家にも当てはまる話ではないか。
現在、株式市場、特に日本の株式市場に割高感は薄い。
だから、景気後退が来ても下落はさほど大きくないと漠然と考えている人もいるかもしれない。
しかし、価格はどうあれ流動性は大きく下駄を履いているのかもしれない。
潮が引いたら誰が裸で泳いでいたかわかる、とはウォーレン・バフェット氏の言葉。
次の株価の底も意外と深いかもしれない。
心苦しいものの、それは投資家にとってはチャンスでもある。

マークス氏は、オークツリーの中国での展開を尋ねられると、大きな疑問を抱えていると吐露した。
中国政府は企業の新陳代謝を促す政策を採っている。
将来はあるが問題を抱える中国企業のローンを適正価格で買えば、後に儲かるかもしれない。
そこで、大きな疑問がある。

(中国でも)法の支配が行われるのか
私たちの投資が米国で31年にわたり成功を収めてきた一因は、ブルース・カーシュが弁護士で(破綻)プロセスを理解し、法の支配に基づき結果を予想する方法を知っていたからだ。
それは中国でも当てはまるか。

マークス氏は、中国でも法の支配が行われるようになると予想する。
現在は慎重に少額を投じ、下調べをやっている段階だという。


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