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米長期金利上昇を悲しむべきか喜ぶべきか、それが問題だ

月末・月初のFOMCを控え、米金融政策についての議論が盛んだ。
2人の著名エコノミストの発言からトピックスを拾っておこう。


量的引き締めはまだ2年ほど続く:ウィリアム・ダドリー

ウィリアム・ダドリー元ニューヨーク連銀総裁は、米長期金利上昇がFRB利上げを不要にするとの見方を解説している。

「パウエルFRB議長が言ったのは、もしも人々の期待する短期金利が上昇したために(より長い)債券利回りが上昇したのなら、FRBは(政策を)正当化する負担を負ってしまうということ。
でも、事実は、FRBが何もしないのに金融環境が引き締まり、タームプレミアムが拡大した。
これは今月のローガン ダラス連銀総裁が講演で述べた、債券市場がFRBの仕事の一部をやり始めたという意見を確認するものだ。」

長期金利の上昇が将来のFF金利上昇を予想するためなら、FRBは市場に背中を押されることになる。
もしも市場期待を裏切れば、その時市場、そして経済は調整することになろう。
でも、長期金利上昇の原因がタームプレミアムによるものなら、これは市場が感じる不確実性に起因するものだから、FRBにプレッシャーが加わることはない。
FRBが利上げをしなくとも、金融引き締めが実現することになる。

この解釈は一見都合のよい話のように聞こえる。
ところが、そうとも限らない。
Bloombergキャスターはその点を的確に突いた。
ダドリー氏は少し状況に安心しているとしながらも、問題点を認めている。

ああ、問題は債券市場がどこに向かうかわからない点だ。

債券市場がいつまでもFRBに都合のよい挙動を続けるとは限らないのだ。

ダドリー氏は、債券需給に大きな影響を及ぼしているであろう量的引き締め(QT)についても尋ねられている。

私の推測では、QTをまだ2年ほど、銀行の準備預金需要とすり合う水準のバランスシートにするまで、続けるだろう。
市場では多くの人がいつQTが終わるか話しているが、すぐには終わらない。
QTは自動操縦だ。

キャスターは、QTによって意図せざる事態が起こらないかと尋ねている。
前回のQTは2018年に長期金利急騰でUターンを余儀なくされたから、同様の話を期待したのだろう。
しかし、ダドリー氏はそうした金融事故の可能性ではなく、銀行の態度の変化を予想している。
QTとは事実上流動性を縮小させる営みだ。
だから、銀行が預金集めを積極化するはずだという。

(次ページ: 利上げ終了を宣言すべき:モハメド・エラリアン)


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