ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏が、前回の超長期の金利上昇局面について回顧し、少々不吉な未来を匂わせている。
「1984年の5月の終わり、それまで14%だった10年債利回りが10%を割り込んだ時、みんな一種の精神病のようなものに陥った。
『なんで1桁の債券利回りを受け入れる人がいるんだ?』
その後8%、6%と下がると、目をこすり、信じられないと感じた。
2年債利回りが3%だった時、みんな受け入れがたいほど低いと考えたのを覚えている。
当時は正しかったが、今は真逆だ。」
ガンドラック氏がChannel 11で、ボルカー・ショック後から始まった長きにわたった金利低下局面を振り返った。
同氏が言いたかったのは、金融市場にはしばしば「信じられない」こと、誰も予想しなかったことが起こるということだ。
「『金利は上がりえない。』
まさにこの言葉を新聞記事や金融番組で聞いてきた。
『金利は二度と上がらない。』
金利は上がりうるが、FRBが止めようとするだろう。」
ガンドラック氏は、FRBが現行の短期政策金利だけでなく、イールドカーブの長期側にも働きかけ、上昇を阻止するだろうという。
これは持続可能なのか。
前回の超長期の金利上昇局面には何が起こったのか。
前回もFRBによる長期金利のペッグが前段にあった。
米10年債利回り
「第二次大戦のための債務で極めて高い債務対GDP比率となった1940-50年代にFRBは同じこと(長期金利のペッグ、短期政策金利と合わせるとイールドカーブ・コントロール)をやっている。
ひとたびイールドカーブ・コントロールを止めた時、25年にわたる債券の弱気相場となり、利回りは2.5%から15%超まで上昇した。
FRBがそれを放置したのは、創造的な量的緩和のようなことを行わなかったためだ。
FRBは、大規模な資産買入れを行うと言ったが、私は市場が心配させるまではやらないと思う。
現在の利回りもそういう状況ではないだろう。」
ガンドラック氏は、戦後から1980年代前半に至るような金利上昇が今すぐさま再現するとは見ていない。
どこかでFRBが人為的にブレーキを踏むと見ているからだ。
それほど高いところまでは行かないだろう。
10年以上の利回りで3%に向けて上昇するのでは。
そこでFRBが少なくともストップをかけ、大規模なQEプログラムを始めるかもしれない。
3%と言えば、2018年に市場がくしゃみをした時の水準だ。
長期金利も中央銀行が人為的に操作する時代になったから、金利上昇を予想するにも限度がある。
むしろ、関心は人為的に抑え込まれた金利の生む歪の方に移ってくる。
それは、第2次大戦中の金利統制の目的と共通するものだ。
「FRBは債務累積の問題を理解しており、金利よりインフレ率が高いことを望んでいる。
これは、スローモーションで起こる債務の価値低下だ。・・・
インフレ率が広い経済でヘッドラインCPIで2.5%まで上がれば、それはFRBが望むものだが、金利が現状にとどまれば、米企業の債務負担より低くなる。
投資適格社債の平均利回りは1.7%だ。
もしもインフレが2.5%になれば、企業債務問題はなくなる。
毎年少しずつ改善していく。」
投資適格なら借金する方が儲かる。
金利が低いままならこんな奇妙なことが起こる。
しかし、話は反対側もチェックしないといけない。
こうしたお金を付ける投資家がいるのか。
ガンドラック氏は、自身が推奨する25%ずつのポートフォリオを実践する人の中にいくらか長期債を持つ人がいるだろうという。
利益を生むためではなくヘッジのための保有だ。
しかし、他に長期債を欲しがる人はいるのか。
外国人は明らかに長期債を望んでいない。
この数年売ってきたし、過去18か月では加速している。
調達金利7%の年金基金が1.71%の長期債を欲しがるとも覚えない。
他に誰がいるだろう。
結局はFRBと25%ずつの人たちだ。
だから、金利は上昇する。
金利は上昇する、ただし、FRBが許すまで。
FRBが許すかどうかは、前回の超長期の金利上昇サイクルと同様、インフレ次第(インフレ上昇の政治問題化)ということになるのだろう。