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米長期金利はマイナスで居座る:ジェレミー・シーゲル
2021年6月27日

ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、長期金利と米国株リターンの見通しを語り、知的で、かつ現実に踏み込む勇敢な学者としての素顔を見せている。


米金利は20年に及ぶ趨勢的低下を遂げた。
実質金利も趨勢的に低下しているから、インフレだけの話ではない。

シーゲル教授がウォートン・ビジネス・ラジオで、マイナスの米実質長期金利について解説と見通しを尋ねられている。
教授の言はややもすると軽薄な強気予想に聞こえることもあるが、こうした突っ込んだ質問への答を聴くと、教授が単なる《愉快な仲間》でないことが見て取れる。

米10年債(青)、10年物価連動債(赤)利回り、10年ブレークイーブンインフレ率(緑)
米10年債(青)、10年物価連動債(赤)利回り、10年ブレークイーブンインフレ率(緑)

シーゲル教授は米金利について「20年の趨勢的低下」と言ったが、実際には40年近い趨勢的低下に見える。
教授はこれまで、この低下トレンドが昨年底を打ったと言ってきた。
教授だけではない。
多くの人が、長期金利が底を打って上昇を始める可能性を心配してきた。

米10年債(青)、10年物価連動債(赤)利回り、10年ブレークイーブンインフレ率(緑)2003年以降
米10年債(青)、10年物価連動債(赤)利回り、10年ブレークイーブンインフレ率(緑)2003年以降

シーゲル教授は、実質長期金利がマイナスとなっている理由をいくつもスラスラと挙げた。

  • 高齢化。
  • 世界的な経済成長鈍化。
  • 引退世代の資産保有が増えることによるリスク回避傾向。
  • 企業年金が損失を嫌う。
  • 同じく実質金利がマイナスの外国からの資金流入。

その上で、実質・名目の長期金利の見通しを語っている。

FRBが短期金利を利上げし始めても、実質金利、長期の実質金利はマイナスが続くだろう。
長期の名目金利は、その価値をインフレが物価連動債よりも多く侵食するため、いくらか上昇するだろう。
ソブリン債務や国債のインフレ調整後金利がマイナスであると予想できる状況にあると考えている。

もしもFRBが金融緩和をいつかやめるなら、実質長期金利がマイナスのままというのはやはり奇妙だ。
米経済の(実質)潜在成長率が0%以上になるなら、実質長期金利も同様の水準になると考えるのが自然だろう。
シーゲル教授は、FRBがFF金利(短期)をいつか利上げすると予想している。
一方で、FRBが長期金利への働きかけを完全にやめることはないと考えているのだろう。
言い換えれば、FRBのバランスシートはある程度拡大したままに留め置かれるということだ。

FRBが長期金利を抑制するような政策を継続するなら、実質長期金利がマイナスを続ける可能性が出てくる。
言うまでもなく、これは経済より市場で効果を発揮しやすく、リスク資産が有利になる。

ここから、シーゲル教授は理解不可能な話を始める。
確たる解釈はできないが、重要な部分を紹介しよう。

「(導入された1997年)10年物価連動債(TIPS)利回りは3.5%、2000年には4.5%近かった。
財務省が保証する金融商品がインフレ調整後で4.5%の利回りとなるのはかなり異例だ。
これは実際には、当時の株式市場の実質リターンをすばらしく予想していた。」

なぜ、TIPS利回りが株式リターンを予想するのかは疑問だ。
シーゲル教授の緑本では、株式利回りはTIPS利回りにリスク・プレミアムを乗せたものとの記述がある。
今回の議論では、リスク・プレミアムが無視されている。
時期はドットコム・バブルの2000年。
市場でリスク・プレミアムが無視されていたという意味だろうか。

シーゲル教授は、現在の株式市場についてこう語っている。

今日はまったく異なる世界になっている。
平均より株式バリュエーションが高いものの、述べたとおり債券のマイナスの実質リターンの中で、私は依然として株式の実質リターンを4.5-5.0%と予想している。

現状の10年TIPS利回りは-0.8%だから、かなり大きめのリスク・プレミアムを見込んでいることになる。
ここで予想されている実質リターンは、シーゲル教授が益回りから予想する水準と合致している。


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