米減税が強気のサインではないワケ

執筆:

OECDやニューヨーク連銀のエコノミストを務めたMichael Ivanovitch氏が米減税案と経済の関係を解説している。
減税は米貿易赤字を悪化させるとして、投資へのインプリケーションを示した。

CNBCへの寄稿でのイヴァノヴィッチ氏の説明は単純明快だ:
個人所得税の負担が減る
→ 家計の可処分所得が増加
→ 家計の消費・住宅投資が増加
→ 企業の投資が増加
→ 輸入が増加、輸出依存が低下


米経済はすでに完全雇用に近い状態にあると言われる。
つまり、供給力に余剰はない。
財政政策で需要が創出されても(短期的には)国内の供給力に期待できず、輸入に回ることになる。
国内需要の増加は輸出産業にも等しく朗報であり、なんとか輸出を拡大しようという切迫感はなくなる。
結果、貿易赤字は拡大してしまうとイヴァノヴィッチ氏は言いたいのだ。
少々静学的な嫌いはあるが(少なくとも短期的には)誤りではなかろう。

そして、米国の貿易赤字拡大は、輸入相手国である中国・日本・ドイツを利することになる。
トランプ大統領が批判する貿易の不均衡を大統領と共和党が拡大させようとしていることになる。


「これは、米国の主たる貿易相手国への数十億ドルの贈り物が、ドナルド・トランプ大統領が『大きく美しく豊かな減税』と呼ぶものの意図せざる結果であることを示しているのか?
結果ではあるが、意図せざるものではないはずだ。
ひとたび減税と例外的な金融緩和環境という危険な組み合わせを実現させれば、米国の『大きく醜く有害な貿易赤字』に何が起こるか、誰かが大統領に説明すべきだったのだ。」

イヴァノヴィッチ氏は、税制の合理化・競争力強化は重要だが、強力な金融緩和の中で財政拡大によって潜在成長率を大きく超える成長率を求めるべきではないと書いている。
金融政策で景気が回復しているところに財政政策まで打てば、インフレ期待は上昇し、政府債務も拡大してしまう。

悲しいことに、すべてのことが金融危機と景気後退の序章のように見える。
これにより、米国は長い長い経済停滞と深刻な安全保障上の問題に悩まされることになろう。

イヴァノヴィッチ氏は、対中国・日本・ドイツでの過度の貿易赤字を解消すべきと主張する。
この点で、大統領の当初の意図と一致している。
ところが最近、大統領は中国との間で北朝鮮問題と貿易問題を絡めたディールを行ってしまったとイヴァノヴィッチ氏は嘆く。
貿易交渉はあくまでWTOの枠組みの中で行うべきと強調している。

イヴァノヴィッチ氏は投資へのインプリケーションをこう語る。

「ディフェンシブな投資姿勢が望まれる。
米市場はさまざまな課題に直面している:
上昇する需要圧力、増加する公的債務・財政赤字、弱いインフレ期待、FRBの次期体制が物価安定のコミットメントを明確化する必要性だ。」


 - 政治