グッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナード氏が、コロナ・ショックからの回復、米政治の見通しに基づき、米国株市場の大幅上昇を予想した。
米連邦準備理事会(FRB)が今後も長期にわたり、低金利政策を維持することで、相場は一段と上昇するとみる。
コロナの打撃を受けた航空やホテル、小売業界の業績も来年には損失を縮小させ、業績回復に向かうことで株式相場は一段と上昇するだろう。
今後、3~4年で相場は50%程度の上昇を見込んでいる。
マイナード氏が日本経済新聞社(電子版)に話した。
米国株市場は、金融政策の要因(低金利・流動性相場)が強く、全般的に追い風を受けるとの見方であり、市場のコンセンサスどおりだ。
コロナ・ショックで大きく抑えられてきた中小型株がより大きくリバウンドするほか、政策変更からクリーン・エネルギー関連も有望とした。
逆に上がりにくいセクターとして、ハイテク、石油・ガス、国内製造業、金融、不動産などを挙げた。
大手ホテル・チェーンは危機を乗り越えるとするものの、フランチャイジーである中小事業者は経営が困難になると予想されている。
マイナード氏は、米大統領選の一応の決着が市場に好感された理由を解説する。
これもコンセンサスどおり、ねじれが望ましいというものだ。
「バイデン氏は共和党議員との関係も良好で、経済刺激策についてもスムーズに合意に達するとみられる。
半面、バイデン氏が導入するとしていた大幅な増税の可能性は小さくなった。これが株式相場上昇の背景だ」
バイデン氏が党派間の対話に長けているのは間違いない。
しかし、一方で、こうした見方が少々ご都合主義的な解釈でどちらに転んでも楽観につなげてきた結果であることも否定できない。
モハメド・エラリアン氏は選挙後、市場が政治状況に関わらず結局は楽観を続けてきたと指摘している。
マイナード氏は、バイデン政権をこう展望する。
「エネルギー政策、インフラ整備、増税など新たな政策を導入するのは上院の抵抗があってかなり難しいだろう。
法人税の課税率やシェールガス採掘などはしばらく現状維持となろう。
インフラ整備については、民主・共和党ともに広範に投資をしたいという意向があり、バイデン氏がうまく法案通過につなげることができるだろう」
これもコンセンサスどおりの見方だが、冷静に見直すと、考える限り最も楽観的な見通しになっていることがわかる。
選挙前から共和・民主間で意見の差がある景気刺激策の規模を除けば、短・中期的に市場に良いことは実現し、悪いことはすぐにはやってこないという話になっている。
マイナード氏は市場の中では慎重派であることも多いが、同氏でさえかなりの楽観に傾かざるをえない状況にあるのだろう。
マイナード氏は、トランプ陣営の仕掛ける訴訟に関連して、悲しい米政治の現実を直言している。
恐らく投開票を巡る争いは12月までずれ込むだろうが、米国政治で真実を追求するのは意味がない。
市場は先行き不透明感からいったん軟調となるかもしれないが、半年後にはまた大きく上昇するとみている
『スミス都へ行く』の昔から、米政治にとって真実など関係ないのかもしれない。
今のところファクトという観点から見て、選挙に不正があったとのトランプ陣営の主張に裏付けはほとんど見受けられない。
その議論に入ることなく「真実を追求するのは意味がない」と話が進むところ、米政治の病巣は深刻なのではないか。