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ハワード・マークス 米国株は買いか、売りか?:ハワード・マークス

オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、米ドル・債務問題・米国株市場について見通しを述べている。


最近最もよく聞かれる質問が『私たちはどんなサイクルの中にいるのか?』と『今はそのどの段階なのか?』だ。
私の主たる答えは、過去5か月の展開は本質的にサイクルではなく、したがって通常のサイクル分析にそぐわない、というものだ。

マークス氏が5日付のメモ「考えるための時間」で書いている。

ディストレスト分野の第1人者マークス氏は、年初までの長い景気拡大の中で待ち続けてきた。
言うまでもなく、有利な条件で投資ができるのは景気後退期だ。
この景気拡大がとりわけ長く続いたがために、長く待たされていた。
2018年には『市場サイクルを極める』を上梓するほど、景気サイクル、それにともなう市場サイクルの進展への準備が整っていた。
あとは景気後退が来るだけだ。
そして、コロナ・ショックでそれがやってきた。
しかし、その景気後退は、これまでのサイクル分析が当てはまらないものだった。
さらには、FRBが前例のない範囲まで債券買入れを行ったため、下落を待つ投資家はフロントランされるような形になった。
マークス氏のゲーム・プランは大きく変更を迫られたことだろう。

米ドルと債務問題

マークス氏は、ドル相場や債務問題にも言及する。

通常、このような拡張的金融政策はドル安、格付会社による米国の信用格付引き下げ、国家債務の利払い増加、世界の準備通貨としてのドルの地位の危険を引き起こしかねない。
これらすべてが米国の拡大した国家債務の返済を困難にし、それがまた財政赤字の高止まりを生む。

しかし、今回の問題の本質は金融政策だけではない。
同時進行で行われている大規模な財政出動も重要な要素だ。
この2つが揃った時、話題が現代貨幣理論(MMT)に及ぶのは自然なことだろう。

マークス氏は、ある元FRB理事に質問して得た答を紹介している。
「アルゼンチンやジンバブエ等の国では・・・より『現代』的でない貨幣理論がまだ成立している」のだという。
つまり、MMTが成立せず、国家が破綻するということだ。
しかし、先進国では少なくとも短期的にはMMTが成り立つ可能性がある。
ただし、それも危うい均衡の上での話だ。

「『市場は、日米のような信頼のおける政府には巨額の借金をさせてもさほど心配しない。
しかし、主たる課題は、何が信頼を損なわせうるかだ。
もしもそれが起これば、その帰結は間違いなく巨大になる。』」

米国株は買いか、売りか?

マークス氏は米国株市場について、不安材料と強気材料を淡々と分析する。
不安材料は、市場の急激な回復だ。
コロナ禍が収束せず経済回復にも時間がかかると見られる中、株式市場はさっさと史上最高値圏まで回復した。
市場における呪いの言葉「今回は違う」と言いたげな展開だ。

一方、マークス氏は、強気材料を2つ挙げる:

  • 株価上昇を牽引しているテクノロジー大手は過去の大企業よりはるかに成長可能性を有している。
  • 超低金利が当面継続すると見込まれ、異常に高いバリュエーションを正当化する。

こう書きながら、マークス氏は1970年代のニフティ・フィフティの記憶を回想する。
ニフティ・フィフティとは今でいうFAANGのような銘柄で、IBM・ゼロックス・コダック・ポラロイドなど錚々たる優良グロース企業群だった。
(ニフティ・フィフティはまた、マークス氏を債券の世界に転向させるきっかけとなった銘柄でもある。)
「株式の死」と呼ばれた1970年代、米国株のパフォーマンスは悲惨を極め、ニフティ・フィフティも例外ではなかった。
その後も長い年月の間に輝きを失ったり、消滅したりした。

マークス氏が不安材料と強気材料を並べて下した結論はこうだ:

これらほかの理由から、今日の株式・クレジット市場は不透明だ・・・いつものようにね。

投資を確率現象と見るマークス氏だから当然なのだが、どうやら最初から確たる結論を出すつもりはなかったらしい。


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