ブラックストーンのジョー・ザイドル氏が、ややコンセンサスと異なる中長期見通しを主張していた。
先月末のレポートだが、最近珍しくなった慎重な意見にも耳を傾けておこう。
バイロン(・ウィーン)と私は、協調的な(財政・金融)政策が継続すると予想している。
しかし、これほど多くの過剰流動性があるにもかかわらず、米経済は政策決定者が望むインフレを生み出すのに苦労するだろう。
私たちはコンセンサスあるいはFRB予想よりも低金利が長く継続すると予想している。
ザイドル氏が自社ウェブサイトで書いている。
3月下旬から回復を始めて以来、市場のコンセンサスは一言で言って強気だった。
現在実施されている財政・金融政策が、コロナウィルスが収束に向かうであろう来年以降、効果を上げるというもの。
経済が急回復し、市場は上昇し、インフレも上昇するというシナリオは、程度の問題こそあれ反駁しがたい。
ザイドル氏、ウィーン氏の異論は、インフレと金利についてのものだ。
両氏は低金利が構造的なものだとして、ディスインフレと低金利が(コンセンサスよりも)居座ると考えている。
比較的短期では、循環的な景気回復にともないインフレ上昇が起こりうるが、それは一時的なものに終わると予想している。
(ただし、アップサイド・リスクが存在するとも認めている。)
ザイドル氏が挙げる最大の原因は高齢化だ。
「高齢化した国々の金利が最も低くなっており、マイナス金利の債務を最も多く持っている。
これは偶然ではない。」
米国は今、日欧に追随しつつあり、今後の景気拡大は緩慢で長期間継続する可能性があるとザイドル氏はいう。
これが投資家に及ぼす影響は自明だろう。
1) 利益成長が遅れているのにバリュエーションが上昇
2) 実体経済のインフレより高い資産価格インフレ
3) ポートフォリオにおいて利回りはますます希少な資源に
このため、ザイドル氏は、伝統的に推奨されてきた株式60:債券40のポートフォリオが今後十分なリターンを与えてくれなくなると予想する。
これまでのところ、インフレ・金利の見方の差こそあれ、多くの読者は同氏の見方に違和感はないだろう。
ザイドル氏の意見がややユニークなのはこの後だ。
多くの識者とは異なり、同氏は株式の構成比を引き上げろとは言わないのだ。
なぜなら、これまで存在してきた株式にとっての追い風:
・金利低下
・減税
・グローバル化
・自社株買い
がなくなると考えているからだ。
金利が下がるうちは資産価格にはプラスだが、底を這うようになると、邪魔こそしないが追い風にもならない。
バイデン政権はいつかある程度の増税を行うだろう。
かつてのグローバル化は、程度はどうあれ、巻き戻す方向にある。
企業は財務を増やしており、自社株買いは減るだろう。
だから、米国株が受けてきた追い風がやんでしまうというのだ。
興味深いのは、ザイドル氏が流動性相場をあまり重く見ていないように感じられるところだ。
果たして未来はどちらに転ぶだろう。
ちなみに、米国株についてコンセンサスほど強気でないザイドル氏は、オルタナティブに目を向けるべきと説いている。
そこで上がったのは私募のクレジット、私募の不動産、CLO、高格付けの石油・ガス中流である。