投資

米国株のリターン、PER、インフレ:ジェレミー・シーゲル
2020年5月15日

ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、米国株のバリュエーションのブレークダウンとインフレの影響について説明している。


昨年(の実績)を見て『1年と1四半期後にあそこに戻れるか』と自問するとよい。
私は2021年半ば・終わり、2022年にも昨年を上回ると予想している。

シーゲル教授がウィズダムツリーでのウェブキャストで、米国株バリュエーションの考え方について語っている。
教授の見方あるいは表現のしかたに強気バイアスがかかっているのは否めない。
しかし、一方で正統的な理論に基づく見方であり一貫性があることも事実。
また、リーマン危機後の強気相場の継続をほぼ当ててきたのも事実だ。
教授のロジックを知っておくことは無駄にはならないだろう。

シーゲル教授は今後公表される四半期業績が悲惨なものになると覚悟している。
つまり、従来のやり方で計算する予想PERはとても高くなり、一見割高に見えるようになるという。
それをそのまま割高と見るのは、あまりにも保守的すぎるだろう。
むしろコロナ後の業績を予想すればよいのだが、それがとても難しい。
そこで、昨年の業績を参考に、いつになったらそこに戻れるのか自問すれば、考えやすくなるのだ。

そうするとPERは18-19倍と、諸外国と比べ安くない。
米市場は大きくアウトパフォームしてきたから、その水準が難しいことはわかっている。

シーゲル教授は足元の株価に割高感があると感じているのだろう。
3月下旬からの回復があまりにも順調すぎると見ているのだ。
その一方で、バリュエーションが高くなる理由も存在すると指摘する。

システム内の流動性の額、債券とフィクスト・インカムでFRBが短期側(金利)を長い間ゼロに保つだろうこと、長期側が金利上昇に苦しむだろうことを考えると、どうなっていくのか?
たとえPER 20倍でも、それは5%の実質リターンが織り込まれているが、そうした世界では本当に良い実質リターンといえる。
株式の過去200年の実質リターン6.7%ほど良くはないが、こうした世界では間違いなく悪くない。

シーゲル教授はかねてから、株式のリターンを予想するのに最善の指標として益回りを挙げている。
PER 20倍ならその逆数である益回りは5%、予想される実質リターンは5%となる。
米リスク・フリー金利を実質で0-2%、株式リスク・プレミアムを3-5%とするなら、やはり期待リターンは5%前後となる。
つまり、低成長下での5%は悪くない。

シーゲル教授はPER 18-19倍は安くないとしながらも「脱線」はしていないと結論する。

ウェブキャストでは、インフレとPERにかかわる「20ルール」を質問した参加者がいた。
これは
 PER ≒ 20 - インフレ率
とする経験則だ。
シーゲル教授が来年以降に3-5%の「穏やかな」インフレ上昇を予想しているためだろう。
つまり、インフレ上昇を予想するなら、PER低下を予想しないのか、と尋ねたのだ。
シーゲル教授は、懐かしみながら、この経験則について語った。

「『20ルール』は20-30年前、米国債(利回り)が5-6%あるいはそれ以上だった頃に遡る。
当時は株式にそれを超えるリターンが求められた。」

シーゲル教授はこれを足元とはインフレの落ち着きどころが異なる時代の経験則だとして、使うのに注意が要ると話した。

穏やかなインフレならPERから差し引くべきでない。
(インフレが)5、6、7、8%になってきたらPERから差し引くとよい。
良くないことが起こり始めるからだ。

この経験則は数式以上に貴重な経験則を語っている。
シーゲル教授は常々、穏やかなインフレが株式にプラスと話しており、これは定性的にコンセンサスといってよい。
では「穏やかな」とはどの程度までなのか。
どうやら米国においては5%ぐらいから株式にも有害になっていくようだ。


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