海外経済 投資 政治

ハワード・マークス 米国債ショックを忘れるな:ハワード・マークス
2020年4月27日

オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、コロナ対策のための政策とその副作用について語っているが、いつも以上に禅問答のようで面白い。


これは私が明確な答を持たない数少ないことのうちの1つで、誰もわからないことだ。

Asia Society主催のウェビナーで、米政府・FRBによる支援策の及ぼす影響について尋ねられ、マークス氏が答えている。
いつもどおり同氏は、わからないことをわからないという。
しかも、他の人に反論をさせない、スキのない話し方だ。
その決然とした態度に、パネラーの1人が爆笑するほどだった。

驚いたのはその後。
マークス氏は1分半にわたって、わからない理由をとうとうと説明した。
米国家債務が増大してきた歴史を説明し、コロナ・ショック前・コロナ・ショック後の財政悪化を淡々と数字で説明する。

「ケインジアンでさえ奇妙というように、好景気の中で1兆ドルの財政赤字を計上した。
今年の財政赤字は4兆ドルになりそうだ。
そして、数兆ドルを証券買入れに充てる。」

米国家債務は昨年23兆ドル超というから、単年度での4兆ドルはやはり想像を絶するほど大きい。
やむをえない支出だとしても、その悪影響を心配するも当然だ。

マークス氏の結論はこうだ。

「私の意見は、誰もどのような影響があるかわからないということだ。」

「わからない」と言いながら、マークス氏が財政悪化を問題視しているのは明らかだ。
もしも、問題がないと考えているなら、答は「わからない」ではなく《問題ない》となっていたはずだ。
実際には、同氏の答は悪影響の有無ではなく《いつ》に向かっている。

「2年のうちに影響が出るかもしれないし、20年後になるかもしれない。
今は予見できないが、子供や孫の世代に打撃を与えるかもしれない。
これをどう見るかは、見るものが楽観論者か悲観論者による。」

マークス氏は、過去を外挿することで人間は将来を予想するものと指摘する。
しかし、今回の出来事とよく似た過去は存在しないとし、外挿ができないと話す。

国家債務増大が米金利に与える金利について尋ねられると、ここでもマークス氏は明確な答を保留した。
ただし、今回はもう少し具体論に踏み込んだ上での保留だ。
マークス氏は、2011年8月のいわゆる米国債ショックを回顧する。
この時、スタンダード&プアーズは、米政府の財政赤字削減への対応が不十分であるとし、米国の長期発行体格付けを「AAA」から「AA+」に引き下げた。

米債務の金利は低下したんだ。
みんな格下げに驚き、恐れ、恐怖で何が起こったかといえば、安全を求めドルが買われた。
質への逃避と言われた。
みんな米国債を買い、それが金利を押し下げた。

マークス氏は、市場を予想する上では、矛盾したようにみえる、予想できない現象が起こりうると釘を刺す。
こうした矛盾は、むしろ日本人の方が痛感しているのかもしれない。

マークス氏は最後に民間セクターの立ち直りについても予想している。

「米国についてU字(回復)を予想している。
連邦政府の政策が有効かどうかはまだ不明だ。
しかし、私はこの点について楽観的な人間ではなく、楽観的になれる材料もない。
回復はするが、S&P 500の利益水準が2019年まで戻るのは2022年までかかるだろう。」


-海外経済, 投資, 政治
-, , ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 その他利用規約をご覧ください。