ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏が、コロナ・ショックでさらに加速した米国の拡張的金融・財政政策を厳しく批判している。
9日のガンドラック氏のウェブキャストは1967年のフィフス・ディメンションのヒット曲「Up, Up and Away」のビデオから始まった。
高揚感のある美しいハーモニー、無数の色とりどりの気球が空に舞い上がっていく。
突然画面がUS Debt Clock.orgに変わり、米国家債務が急騰する様子を表示する。
次に来るのはスーパーマンのコラージュを施されたパウエルFRB議長。
空高く飛び回る議長のあとにはドル紙幣がばらまかれていく。
少々えげつなくも見えるビデオは、ガンドラック氏の拡張的金融・財政政策への批判・怒りを表したものだろう。
そういえば、3月にはユーロ・パシフィック・キャピタルのピーター・シフ氏もえげつないビデオを作って公開していた。
こちらはスターウォーズのパロディで、その名も「カレンシーウォーズ:ハイパーインフレーションの夜明け」。
かつて緊縮を唱えた共和党寄りのエコノミストがダークサイド(拡張派)に堕ちたというストーリーだった。
いずれも、財政再建を唱える人たちの無力感が現れたものといえるだろう。
さて、ガンドラック氏は、債務の急拡大と事実上その受け皿となっているFRBのバランスシート拡大についてチャートを示した。
そして、日本を公的債務対GDP比率急拡大の先例として挙げている。
米国の現状の公的債務対GDP比率120%を、日本は1998年に超え、基本的に増え続けている。・・・
日本は債務対GDP比率が莫大に増えてもほとんど実質経済成長を実現していない。
1998年に同比率が120%を超えて以降、現在に至るまで累積的経済成長の実現に苦戦している。
最近、追加緩和の議論に関連し、日本が反面教師として引かれることが多くなった。
結果論でいうなら、日本のこの間の財政悪化が本当に効率的な財政運営の結果だったのかとの疑問はあってしかるべきだろう。
財政を使っても経済が成長しなかったとすれば、その財政支出は成長にではなく富・所得の移転に向かったとの解釈もできる。
つまり、バラマキの可能性であり、それは現在のコロナ対策のための空前の財政出動にも向けられる疑問である。
富・所得の移転が一概に悪いものでないこと(困窮した人を救うことは良い行いであること)を考えれば、ガンドラック氏の批判はやや厳しすぎるようにも感じられる。
ただし、その手法・使い方が適切かどうかは常に検証されるべきであり、政治家に過度なフリーハンドを与えるべきでないのはいうまでもない。