ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が、米国が「債務者の罠」に陥っているとし、その解決の過程で起こることを予言している。
エリック、君が債務者の罠に陥った国々に関しどうしたら世界の繁栄を促進できるか探求するよう促しているのを見てワクワクしている。
米国もそう(債務者の罠に陥っている)なのだから、君は米国もそのカテゴリーに含めているのだと考えている。
ダリオ氏が10日ツイートした。
同氏が「エリック」と呼んでいるのはグーグル元CEOのエリック・シュミット氏だ。
シュミット氏は、現在の世界の金融市場において途上国にニュー・マネーが回らなくなっていることへの危機感をツイートしていた。
途上国が債務者の罠に陥っていると指摘し、このままでは世界の繁栄を推進できなくなると危機感を表している。
ダリオ氏が言いたかったのは、問題が途上国だけのものではないということだ。
米国も債務者の罠に陥っているとダリオ氏は考えている。
米国がそうなら、他の先進国の中にも「そのカテゴリー」の国があるのだろう。
ここからいつものダリオ・ワールドが始まる。
ダリオ氏は、国家が債務者の罠に陥ることは有史以来何度も起こっていると紹介している。
そして、その解決法はいつも同じだったという。
仕組みからいって、債務が自国通貨建て(米・中がそう)ならば、貨幣増発が不可避で、貨幣の価値が低下する。
程度は少ないが、債務リストラが起こる。債務が外貨建てならば、債務返済負担が歳入に占めるパーセンテージが耐えられる水準になるまで、債務がリストラされなければならない。
自国通貨建て債務は、多くがマネタイゼーションで消化されるのが通例で、債務リストラは一部に留まることになる。
外貨建て債務は、どの国も外貨を発行することはできないためマネタイゼーションできず、正々堂々債務リストラをするしかなくなる。
いずれのケースも、程度はどうあれ、起こるだろうことは、自国通貨の価値低下だろう。
金融や投資のコミュニティにおいては、もはやこうした政策の是非について議論することが少なくなった。
是非がどうだろうが、他に道がないからだ。
ダリオ氏は数年前から、協調的金融・財政政策が採用されることになると予想してきた。
金融・財政政策ともに伸び切って、やれることが少なくなっていたためだ。
両政策を協調させることで得られる財政余地(つまり疑似ヘリコプター・マネー)によって好ましい政策が採れるかもしれないことをメリットとして指摘していた。
一方で、ドルの健全性が侵されることに強い危機感を示し、時期はともかく政策の正常化を求める発言もしている。
つまり、予想と善悪は別のものということなのだろう。
金融・投資のコミュニティでは多くの人が貨幣の価値低下、あるいは高めのインフレの発現確率がいつになく高まったと感じている。
善悪とは関係なく、インフレ・ヘッジの方法を模索する動きが強まっている。