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米国の最大の欠損とは:ローレンス・サマーズ
2019年2月1日

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が、困窮する人々の救済や社会インフラ整備の予算を増やすべきと説いている。
その優先課題の下では、財政悪化など考える必要はないという。


私はそれが最大の問題だとは思わない。

米財政赤字急拡大についてCNBCで尋ねられ、サマーズ氏はそっけなく話し出した。
つらい思いをしている人々、整備が不十分な社会インフラの現状を並べ挙げ、今はそうした問題の解決を財政問題より優先させるべきと示唆した。

「財政赤字?
資金は30年間3%で調達でき、その通貨は我が国が発行している。」

米国は金融政策正常化が始まっているとは言え、いまだに歴史的な低金利にある。
超長期の資金を安く借りることができる。
仮に返済が苦しくなれば、FRBが通貨を発行し、債務をマネタイゼーションしてしまえる、と言っているのである。

「財政赤字は米国にとっての最大の欠損ではない。
最優先に行うべきは、投資の欠損を治すことだ。」

サマーズ氏は、米社会において(公共・民間を問わず)必要な投資が行われていない点を心配しているのだ。
それが必要である以上、財源など構っていられないというスタンスなのである。
結果、米国債市場にリスクが存在することは認めるものの、他の問題に比べれば無視できると考えている。

「市場が長期金利を現状のように低位にプライシングしている事実こそ、現在の市場の判断を示している。」

いかにも学者にありがちな危険な思考だ。
まだFRBバランスシートの正常化は緒についたばかりで、最近のFRBのハト派ぶりで頓挫することも予想されている。
その中での低金利が市場の判断というのはとても危うい。
政府や中央銀行が操作すれば、市場をどこまでも操れると考える傲慢な思考のように聞こえる。

さらに、この思考は諸刃の剣でもある。
仮に金利が上昇したら、それを市場の判断として、投資をあきらめるのか。
そもそも話は、必要な投資は必要だ、という話だったはずだ。

サマーズ氏の主張で特筆すべきは、主張する財政政策の目的を景気刺激策としていないところだ。
昨年末のトランプ政権・共和党の減税・歳出増は景気刺激に主眼を置いていた。
一方、サマーズ氏の主張は、米国という家族が生存に適した環境を作るための投資にお金を惜しむべきでないというものだ。
ただでさえ小さな政府だった米国がさらに小さな政府になろうとしている中、サマーズ氏の主張は傾聴すべきものだろう。

家族だったら、住宅ローンを返済するのもいいことだろう。
しかし、子供を大学にやるのはもっと大切なはずだ。


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