ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、米国における雇用環境について予想している。
失業率は(来年も)比較的高いままだろう。
来年下がるが、コロナ・ショック前には戻らない。
戻るには何年もかかる。
シーゲル教授がThinkAdvisorのインタビューで、厳しい労働市場の先行きを予想している。
米市場について強気の最右翼であるシーゲル教授が、雇用に関しては極めて弱気だ。
いや、雇用について弱気だからこそ市場に強気なのだ。
雇用が悪いから拡張的経済政策が続き、それが市場を押し上げる。
残酷な格差拡大のシナリオである。
レイオフされた多くの人が来年再雇用されることはない。
再訓練を受けなくてはならないか、労働市場からこぼれ落ちてしまう。
これは、企業が新たな経済において生産的でない、あるいは必要ないと考える人たちを一掃するチャンスだった。
再訓練には時間がかかり、失業率はしばらく高止まりする可能性がある。
容易に従業員を切り捨てる米国の企業風土。
ショックはむしろ企業にとってリストラのチャンスなのだ。
結果、ショックを被ったはずなのに企業の生産性や収益性が改善したりすることさえある。
特にコロナ・ショックのように外生的要因による場合、確率が高くなる。
シーゲル教授は、再訓練についてもコメントを求められている。
必ずしも(大学は)必要ない。
大学教育はその重要性が過大評価されている。
必要なのは、産業が提供しつつある訓練、企業が必要とする職種につながる訓練であって、ほとんどの大学での典型的な訓練ではない。
長くウォートン校という老舗ビジネススクールの教授を務めた人がこう語るのだからその通りなのだろう。
もっとも、馘首される度に産業・企業の都合を満たす再訓練を受けねばならない労働者は本当に気の毒だ。
いやいや、そういう同情も労働者のみなさんにとって失礼にあたるかもしれない。
したたかに生き抜こうとしている人も多いだろうからだ。
以前、ロバート・シラー教授が、ロボットに仕事を奪われると心配する労働者が投資家として株式市場に参加していると話していた。
自分が脅威を与えられていることへの対処として、自分が脅威を与える側に参加しようというわけだ。
今回、仕事を奪われた人の中にも、割増の失業手当を株につぎ込んだ人もいたのだろう。