米中貿易摩擦解消がもたらす不都合な帰結:ピーター・シフ

Euro Pacific Capitalのピーター・シフ氏が、米市場の弱気相場を宣言し、景気後退入りを予想した。
あわせて、米中貿易摩擦の解決は、米経済により深刻な問題をもたらすと解説した。


「そもそも、米市場は調整しているのではなく、弱気相場に入ったんだ。
弱気相場にも調整はあって、それは上昇と呼ばれている。
CNBCの人たちは例外で、彼らは強気相場の中で下げることだけを調整と呼んでいる。」

シフ氏がポッドキャストで強気バイアスのかかった市場関係者をからかっている。
同氏によれば、金融メディアCNBCは一日中市場が調整の域を脱したと喧伝しているという。
ピークから(慣例的定義である)10%下がった水準を脱したから、もう調整は終わったというロジックだ。
これに対してシフ氏は、トレンドはすでに下落に変化していると主張する。
そして、下落トレンドの中にも調整はあり、それは(おそらく10%)上げることだと主張しているのだ。

いずれの立場も理解はできる。
米市場は長く上昇し短く急落する傾向が強いし、上げを予想することで利益を得る人が多いから、業界もメディアも強気バイアスがかかっている。
一方、《10年に一度大きく当てる男》シフ氏にも明らかな弱気バイアスがある。
どっちもどっちなのだ。
しかし、今の時点だけを見る限り、シフ氏にやや分があるかもしれない。
10年に一度の勝利が見え始めているからだ。

「2015年12月の初回の利上げより前から私は、もしもFRBが金利を正常化しようとしても決してうまくいかないと予想してきた。
FRBは決して金利を正常な水準まで戻せない。
その過程で株式市場を弱気相場に突き落とし、景気後退を生み出し、FRBが逆戻りするはずだからだ。
まさにそれが起こっているんだ。」

シフ氏は従前から、FRBが金融政策正常化に頓挫し、利下げ・QE 4を始めると予想してきた。
こうした予想は《いつか》を別とすれば多くの人にも共有されやすい予想だ。
景気後退がやってくれば、当然想定すべきシナリオなのだ。
シフ氏は自身の予想に自信を示す。


「(株式投資家は)パウエル・プットが戻ってきたとパーティに興じている。
彼らは、FRBがもう利上げしないと思い、FRBが経済を後退に陥れると心配する必要はもうないと考えている。
もう遅い。
過去の利上げだけで、経済の景気後退入りは確定済みだ。」

シフ氏からすれば、本当の問題は過去の放漫な金融緩和の連続にあった。
経済は金融緩和に慣れきり、依存するようになった。
リーマン危機後のゼロ金利政策の中で、米経済はゼロ金利を前提とする体質になってしまった。
2.25-2.50%のFF金利誘導目標に耐えられないと見ているのだ。

シフ氏は、希望の光が見えてきた米中貿易摩擦についても、楽観できないと話した。
そもそも、心配すべきポイントがずれていると示唆した。

「中国は全体では小さな貿易黒字で、仮に対米で収支を均衡させたら(全体で)赤字になってしまう。
買物のバカ騒ぎが始まったら、そのお金はどこから来るんだ。」

シフ氏は、中国が貿易赤字になれば、外貨準備の中心となっている巨額の米国債を売却することになるだろうと言う。
黒字国が保有するドル資産は厄介な存在だ。
売れば米ドルや資産価格の下落を通して保有国の損失となる。
ただただ積み上げるだけで、二度と使えない文鎮のようなものだ。
米国からすれば、行使されることのない証文で、世界から買物を続けることができているのだ。
シフ氏によれば、中国がそれを崩して米国から何か実物を買えるなら「中国の大勝利、米国の大敗だ」という。

中国が売った米国債を誰が買うか。
私にはわからないが、多分FRBだろう。
FRBは買うためのお金を用意しなければならず、どこからともなく生み出さなければいけない。
だから、米国は金利上昇とインフレ昂進に見舞われることになる。


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