米中合意で米国株は10-12%上昇:ジェレミー・シーゲル

ウォートンの魔術師ことジェレミー・シーゲル教授が、FF金利について50 bpの利下げが必要と述べた。
また、エスカレートする米中摩擦に言及し、年内の米国株見通しを語っている。


「昨日の時点で、FF金利は10年債利回りより50 bpも上にある。
・・・
FF金利は50 bp下げ、10年債より下にあるべきだ。
FF金利は現在すべての年限で先進国中最高の政策金利になっている。」

シーゲル教授が8日のCNBCで、FRBにさらなる利下げを促した。
教授が求める利下げは50 bp。
その1つ目の理由が、イールド・カーブの長短逆転だ。
教授はさらに2つの理由を挙げている。

次に、私は経済がそれほど強いとは思わない。
加えて貿易の混乱もある。

2つ目の理由は米経済がいわれるほど強くないこと、保険的利下げが必要というものだ。
しかし、FRBはすでに7月に米中摩擦を念頭に保険的利下げをしたばかりではないか。
市場関係者からの保険への要望には節操がないのだ。

シーゲル教授は、速報値で2.1%とされる第2四半期の成長率は確報で2%を割り込む可能性があると心配している。
第3四半期は1%台前半まで落ち込む可能性もあるという。
また、先週の雇用統計もさほど強いとはいえないと指摘している。
米経済は景気後退の兆しこそないが、有意に鈍化していると述べている。

ファクトに基づく尊重すべき議論ではあるが、同時に官製ゴルディロックスをなんとかして維持しようとの議論にも聞こえてしまう。

3つ目の理由は政治的意味合いだという。

おそらくもう1つFRBが(利下げに)動く良い理由は、FRBが50 bp利下げすれば、トランプ大統領は自身の通商政策以外、経済鈍化の犯人といって責める相手がいなくなることだ。
ジェローム・パウエルFRB議長の責任といえなくなる。

あと50 bp利下げすると金融政策が景気鈍化の容疑者リストから外れるとシーゲル教授は話している。
しかも、返す刀でトランプ大統領にプレッシャーをかけることになるのだという。
もう有力な容疑者リストには大統領自身の通商政策しか残っていないためだ。


ただし、この理由もやや楽観的すぎるかもしれない。
プレッシャーをかけるべき相手は理屈や事実を軽視する人物だからだ。
景気鈍化を平気で何の関係もない移民やマイノリティーの責任にするかもしれない。
そうなれば私たちはその論理に驚くだろうが、そうなったことには驚かないのではないか。

CNBCキャスターの1人も、3つ目の意見には同意しかねる様子だった。
景気鈍化懸念が去っても、為替を理由にさらなる利下げが要求されるのではないか。
現在の米国では、金利の日欧化が恐れられているのだ。

シーゲル教授は自身の利下げサイクルのイメージを語っている。

私はゼロ金利にしろといっているのではない。
私がいいたいのは、おそらく1.5%ぐらいの水準だ。
これは現在の米GDP成長率の水準だ。

この言葉にシーゲル教授のバランス感覚が垣間見える。
教授のシナプス回路を想像すると

  • 経済成長率は潜在成長率と似た水準であってほしい
  • 長期金利は経済成長率と似た水準であってほしい
  • FF金利を含む短期金利は長期金利より下であってほしい

米潜在成長率は2%程度とされ、残念ながら経済成長率はそれを少し割りこみそうな様子だ。
長期金利(名目)は1.7%と経済成長率(名目)を大幅に下回っている。
ならば、FF金利(現行2.00-2.25%)はそれより低くなるように、さらに50 bp下げてほしいといっているのだ。

シーゲル教授は、世界的な低金利(特に日欧)の原因に人口動態上の構造問題が存在すると指摘する。
世界は1990年代・2000年代とは全く異なり、中央銀行は以前のような金利水準を想定した金融政策を行うことはできないという。

《永遠のブル》とあだ名されるシーゲル教授の主張はあくまで楽観を外さない。
楽観、とりわけ市場への楽観を維持できるように政策はあるべきとの思いがにじみ出ている。
その楽観の背景にあるのは来年の大統領選だ。

「トランプ大統領に再選のチャンスがあるとすれば、経済や株式市場が良好なことだ。
すべての調査で、トランプが正味プラスの評価を受けているのはその点だ。
大統領が再選をあきらめ、このまま(貿易戦争を)続けるというなら、それも選択肢だろうが、彼の頭にはないだろう。」

最後に年末までの米国株の見通しを尋ねられると、貿易戦争次第で大きく変わるという答えだった。
シーゲル教授は、必ず大統領が選挙前に合意すると見ているのだから、問題は上昇のタイミングなのだろう。

貿易摩擦で合意すれば、私が以前5%、5%上がるといったとおり、今日から10-12%上昇するかもしれない。
貿易戦争が継続し先鋭になるなら、年内の上昇はない。


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