アリアンツ首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、米市場に心配な兆しが見えているとし、単純なパッシブ投資を続けることのリスクが高まっていると話している。
明るくなりつつあるが、とても明るいというわけではない。・・・
テクニカル面が強く市場を支えているが、フィクストインカム市場には悪い兆しも見られている。
エラリアン氏がCNBCで、市場に黄信号が灯っていると話した。
同氏が注目したのは、米イールドカーブのスティープ化だ。
短期側をFRBがコントロールする中、長期側が上昇している。
年初5営業日で、2年-10年、2年-30年のいずれについても約20 bpの長短スプレッド拡大が起こったと指摘している。
エラリアン氏は、このスティープ化が良くない理由で起こったと解説した。
成長によるものでなく、買い手が買いたがらなくなっていること、リフレではなくインフレに心配していることによるものだ。
もしもこれが続き、今後5-6営業日でさらに20 bp上昇するようなら、その時点で黄信号ははるかに明るく点滅することになるだろう。
言うまでもなく、金利上昇は資産価格に対してマイナスの効果を及ぼしうる。
ただし、その金利上昇が経済成長によるものなら心配はいらない。
企業収益などキャッシュフロー側の増加率も上昇が見込まれるため、むしろ資産価格にプラスに働くことも多い。
こうした《良い金利上昇》は(理論上は)実質金利の上昇として表れる。
一方、「リフレではなくインフレ」という言い方には、望まないインフレというニュアンスがある。
FRBが望む以上に将来インフレが進むことを恐れる人が増えている。
FRBが好まないインフレとは、リスク資産にも良くないレベルのインフレとなることが多い。
実際、2018年にインフレ上昇が予想された結果、リスク資産が調整したことは記憶に新しい。
当時の長期金利は3%前後だった。
現在の長期金利はまだ1.1%を超えたところで、先は長いように思える。
しかし、エラリアン氏は上昇ペースへの警戒を怠るべきでないと考えているのだ。
金利が本格的に上昇するなら(その内容によっては)リスク資産の価格についても警戒を強める必要がある。
エラリアン氏は、ここで考えるべき1つのテーマについて語っている。
過去数年大きな成功を収めたトレードは、単純にS&P 500、各種インデックス、NASDAQ指数に賭けるというものだった。
何でもよくて、みんな上昇した。
現在のバリュエーションにおいては、株式についてもっと差別化する見通しを持つべきだ。
日本の米国株投資家の中には米主要株価指数に投資している人が極めて多い。
理由は大きく2つあろう:
- 米国株は上がり続けるという経験則を信じている。
- 米市場の個別銘柄・セクターに対する知見では不利な立場にあると考えている。
個別銘柄・セクターに対する審美眼に優れた投資家なら、その道を歩めばよい。
エラリアン氏は、パッシブでなく投資テーマが重要な時期に入ると予想している。
銘柄・セクター選別が難しい場合、仮に米国株神話がお休みに入るようなら、目論見が大きく違ってくるのを覚悟すべきだろう。