米ドル高を支える幻想:ピーター・シフ

Euro Pacific Capitalのピーター・シフ氏が、米国による対イラン制裁とドル相場についてコメントしている。
ドル相場に関する幻想が消えるとき、米ドルは下落を始めるという。


「ドナルド・トランプは何を優先するか整理する必要があるだろう。
FRB利上げを非難し利下げを求めてきたが、FRBが利上げしない理由に挙げたのは原油価格が低いためというものだ。
原油価格は最後にFRBが利上げしてから40%以上も上げた。
もしもさらに上がるなら、FRBの言い訳はなくなる。」

シフ氏が4月下旬、露RTで述べている。
自身の信念だけを述べ、自国への配慮をしないシフ氏は、RTの常連ゲストだ。
今回は、米国の対イラン制裁強化に関連してシフ氏の米国批判を引き出すというのがRTの主眼だったようだが、シフ氏はそうした制作者の意図もお構いなしだ。
制裁に対する批判というよりは、それが原油価格・CPI・金融政策に及ぼす影響の方に興味を示している。

「アメリカ人は石油に高い値段を払わなければいけない。
石油の価格はCPI総合にも含まれているから、公表されるインフレ率にも効いてくるだろう。
小売りの数字を見ると、一番強いのがガソリンだ。
消費者は高い価格でガソリンを買っている。
ガソリン価格は上昇を続けるだろう。」

シフ氏は原油価格上昇が及ぼす悪影響の方に目を向ける。
経済を下押しし、インフレの上昇圧力となり、FRB利上げの確率を高めると指摘した。
これを許容しても制裁を強化するのか、それともFRBに金融緩和を求めるのか、その優先事項を明確にすべきといいたいのだ。

米国がこうした力を発揮できるのは、米ドルが準備通貨で、もしも他国が従わない場合には銀行システムの米ドルへのアクセスを切断すると脅しているからだ。
しかし、こうした国々もこのやり方を続ける動機を失いつつある。


米国が主導する経済制裁については、国際社会が一枚岩とは限らない。
とりわけ対イラン制裁については、そもそも米国のイラン合意からの離脱への批判も多かった。
EUはイランとの間でドルに依存しない決済システム構築を模索している。
言うまでもなく、こうした変化は米国の国際社会に対する発言力を弱め、かつドル相場を軟化させる要因だ。

シフ氏はさらにその先まで見据えている。
米国の財政赤字・貿易赤字が過去最大の水準に達しているとし、米国が諸外国に依存する構造ができあがっているというのだ。
貿易赤字は諸外国から米国への投資によってバランスされる。
財政赤字は投資家からの米国債投資によってバランスされる。
消費好きのアメリカ人だけでこれを賄うのは不可能だ。

だから、次の景気後退期、諸外国からの借金の額はとび抜けるだろう。
かつてないほど彼らの慈悲に依存することになる。

シフ氏は、米国が寝た子を起こすようなことをすべきでないという。
諸外国がドルを受け入れ、ドル建て原油価格を受け入れてくれている現状を損なうようなことをすべきでないと主張する。
そうでなくともドル神話にはほころびも見える。

過去数年米ドルを押し上げたのは、FRBが金利を正常化しバランスシートを縮小できるという誤った思い込みだ。
FRBは現在、いずれもしないと認めている。
だから、ドル高要因はいずれも消し飛ぶ。

シフ氏は、市場の思い込みが去り、今起こっていることを認識するようになれば、ドル安に大きく傾くと考えているのだ。
同氏は、ドル安になれば原油価格(ドル建て)には上昇圧力となると予想した。

これは再びインフレ圧力となり経済への下押し圧力・FRB利上げ圧力となるだろう。
これが単なるコスト・プッシュ・インフレで経済の改善がともなわなければ、さほどドル相場にとってもいい話にならないかもしれない。
シフ氏の従前からの見通しは、米ドルのスパイラルな下落である。


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