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竹中平蔵教授も推すベーシック・インカム、実験がフィンランドで

竹中平蔵 東洋大学教授が平成の30年を振り返ったインタビューの中で、ベーシック・インカムに触れている。
この制度については最近、フィンランドから興味深いニュースがあった。


「社会保障制度改革や労働市場改革は積み残された。
日本を含め、世界では格差を超えて絶望的な社会の分断が進んでいる。
しかし、どの国も有効な政策を打ち出せていない。
究極的には、政府が最低限の所得を支給するベーシックインカムを導入するしかないと考えている。」

竹中教授がReutersのインタビューで、ベーシック・インカム導入を主張している。
竹中教授と言えば、小泉政権の経済閣僚。
小泉改革には新自由主義的なイメージがあり、教授がベーシック・インカムを推すとは少々意外だった。
(筆者は新自由主義という言葉に価値観を含めていない。いい新自由主義も悪い新自由主義もあると考えている。)
少し調べてみると、例えば2017年のコラムにも短くベーシック・インカムに触れた部分があったから、以前から考えていたことのようだ。

小泉改革にはいくつか立派な要素があった。
一番に挙げるべきは、改革には痛みがともなうことを宣言した上で民意を問い続けたことだ。
小手先の対処ではなく、構造改革こそが重要と説いたことは、今でも政治の最重要課題になっている。
この現実主義には抜群の説得力があった。

「頑張った人が報われる」世の中をと言い続けた竹中教授が、今ベーシック・インカムを説いている。
もちろん、新自由主義とベーシック・インカムとは先鋭に対立する概念とは言えない。
「頑張った人が報われる」一方で、困窮した人たちにはセーフティ・ネットも必要と言いたいのだろう。
しかし、新自由主義とは良い格差も悪い格差も拡大するものだし、そうした考えとベーシック・インカムとは相いれないイメージが付きまとう。
それでも竹中教授がベーシック・インカムと言っているのは、それほどに格差の問題が重大な問題になった証左なのだろう。

ベーシック・インカムについては今月、注目すべきニュースがあった。
2017年からフィンランドで2年間行われたベーシック・インカムの社会実験だ。
ランダムに抽出された失業者に月560ユーロ(7万円弱、無税)を2017年1月から2018年12月まで給付した。
結果速報では2つの観点から発見を説明している:

「ベーシック・インカム実験は、実験の初年度、参加者の労働レベルを増やさなかった。
しかし、実験の終了時、ベーシック・インカムの受給者はコントロール群と比べて幸福が改善したと認識した。」

すでに、この結果についてはいくつか報道がなされている。
シンガポールCNAは、第1文の結果から、ベーシック・インカムが労働意欲を増やさないと解釈した。
お国柄を表した解釈だが、これは強引すぎる。
第1文が言っているのは、ベーシック・インカムが給付されたからと言って、労働日数や賃金は増えなかったという話にすぎない。
これを労働意欲と結びつけるのは強引すぎる。
そもそも、ベーシック・インカムが給付されたから失業者が労働日数を増やさなければいけないというロジックに無理がある。
失業者とは、給付があろうがなかろうが、労働日数を増やすよう努力すべきなのだ。

また、それ以前の前提の話としてベーシック・インカムをどの観点から議論すべきかについてもコンセンサスが必要だ。
ベーシック・インカムとはセーフティ・ネットなのか、それとも社会の効率を改善するためのツールなのか。
おそらく前者なのではないか。
後者であれば、ベーシック・インカム以前に優先されるべき施策があるに違いない。

そう考えると、当たり前のことだが、第2文で受給者の人たちが幸福感が増したと感じたことはプラスだ。
もちろん、こういうプラスもあれば、他のところにマイナスもある(財源、人情など)。
不幸な人が幸福になるなら、この制度は少なくともまじめに検討するだけの価値はありそうだ。

世の中にはもう1つ大きな格差問題がある。
それは、機会の格差拡大だ。
政治の世界には二世・三世があふれ、官界や財界もいまだ終身雇用の色彩の濃い組織が残っている。
お金の話は給付で済むが、機会の話は何も見通せないほど難しい。


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