海外経済

私は100兆ドル持っている:ジェフリー・ガンドラック
2020年2月10日

債券王ことダブルライン・キャピタル ジェフリー・ガンドラック氏の対談の第4弾: マクロ経済政策における極論に疑問を呈している。


みんなも持っておくといいよ。
バーで(こうやって周囲に見せると)やり手に見える。
『100兆ドルだ!』

ガンドラック氏が、ジェフリー・シャーマン副CIOとの対談で、財布から100兆ジンバブエ・ドル札を取り出し聴衆に掲げて見せた。
ガンドラック氏は誰かからもらったものだというが、eBayで5ドルで買うことができるのだという。

シャーマン氏は同じ100兆ドル札を2枚持っていて、トレーディング・デスクに置いているという。
同氏は大ボスの隣で自慢する。

「僕はジンバブエでは彼より倍も金持ちなんだ。」

ジンバブエはアフリカ南部の国。
ジンバブエ・ドルは1980年から2015年までジンバブエの法定通貨だった。
1980年からのムガベ政権の失政により高インフレが続き、財政赤字のマネタイゼーションから、数度のデノミでも立ち直ることなくハイパーインフレに陥った。
1980年のインフレ率は7%、1981年は14%、2001年132%、2008年は355,000%だ。
(ディスインフレに苦しむ国からすれば羨ましい限りだ。)
2009年に発行が停止され、名実ともに外国通貨による経済となった。
2014年の時点で9つの外国通貨が法定通貨として認められ、日本円もその1つだった。
2014年に独自のボンドコイン(硬貨)、2015年にボンドノート(紙幣)が発行され、同年にジンバブエ・ドルが正式に廃止された。
2019年6月にこれらはRTGSドルと改名され、ジンバブエの唯一の法定通貨とされたが、10月末にはインフレ率が300%に到達、混乱は続いている。

ガンドラック氏は、国家債務の増大を心配する必要はないと主張する人たちの考えを批判する。

これこそ債務が問題であることを証明し、国家が貨幣増発で繁栄を築くことはできないことを認めているんだ。
『私たちはずっと間違っていた。
債務は問題ではなく、米国は準備通貨を持っており、それを刷れる。
MMTだ。』
こんな考えがもしもコンセンサスになるなら、もしもそれが正しいなら、どうしてジンバブエは世界で最も繁栄する国にならないんだ。

もちろんジンバブエと米国や日本を同列に比較するのは一種の暴論だ。
ジンバブエ・ドルが準備通貨であったことはない。
米ドルや日本円を保有しようという人が多くいたからこそ、米ドルや日本円は一定の信認を保ってきている。
しかし、準備通貨だから大丈夫という議論にもどこかに限界がある。
準備通貨たりえるゆえんは、持っていて大丈夫だとみんなが考えているからだ。
《準備通貨なら大丈夫》という議論はしょせん《大丈夫だから大丈夫》という議論にすぎない。
本質が人の心にある以上、いつ変化が起こっても驚くことではあるまい。

話題がジンバブエ・ドルに及んだのは、Q&Aセッションで質問があったからだ。
(つまり、ガンドラック氏はジンバブエ・ドルを用意していたわけではないということ。)
質問者は、貨幣の流通速度が上昇すればマネーを回収できるはずと投げかけた。
思い切った政策をとれば状況は変化するはずと主張した。
ガンドラック氏は短くコメントした。

「それ(貨幣の流通速度の上昇)は起こっていない。」

シャーマン氏は、理由はわからないが、単純な交換方程式の関係は成り立っていないと指摘し、貨幣の流通速度が上昇するはずとする根拠はないと話した。
ガンドラック氏は、この議論にあまり関心がないようだ。
同氏は常々この手の議論を「循環論法」と批判し、頭脳に有害と嫌悪している。

何か貨幣の流通速度と債務の速度の間にリンクがあるように思う。
これらは同じコインの2つの面なんだろう。

現実を見るかぎり、経済が拡大すれば、その裏で債務も増えている。
債務拡大による経済成長で債務を返済する、あるいは債務対GDP比率を減らすという考えは現実的でないと言いたいのだろう。


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