私は逆張り投資家じゃない:ジム・ロジャーズ

ジム・ロジャーズ氏が自分の投資スタイルについて語り、そこに存在する大きな弱点を打ち明けている。


私は自分のことをそう考えてはいないんだ。

ロジャーズ氏がReal Visionのインタビュー(2017年)で、逆張り投資の秘訣を尋ねられて答えた。
ロジャーズ氏は、自分のことを逆張り投資家とは考えていないのだ。

「逆張り投資家というのは、みんながXを買っているから自分はXを売るというやつだろう。
私はそんなことはしていない。」

ロジャーズ氏は、人と逆のことをやっているわけではないという。
人の行動に惑わされず、自身の独立した判断によって投資しているのだという。
娘さん達にも、好奇心を持つこと、独立して考えることを教えていると話している。

ロジャーズ氏は、就職したての頃を回想する。

「初めて職業についた時、私はみんなが私よりはるかにものを知っていると考えていた。
・・・でもほどなくして、みんなが私よりものを知らないことに気づいた。
・・・経験があり、知識があり、教育もあるのにだ。」

一方でたくさんの失敗もやらかしたと言い添えつつ、こうした経験からロジャーズ氏は独立した思考の重要性を学んだのだという。
アラバマの田舎から出てきた青年は、とびきりの秀才であり努力家だったのだから、こうした経験も当然のことなのかもしれない。
ロジャーズ氏に自負がないはずはない。
しかし、同氏は常識ある誠実な人物だ。
最近、内外のメディアの一部にロジャーズ氏を「世界の3大投資家の1人」などと紹介するケースが見られるが、そうしたメディアが報じるものは見ない方がいい。
本人はそんな持ち上げ方を望んでいないだろうし、そう持ち上げた後に報じられる内容にどれだけの価値があるか大いに疑問だ。
(もちろん読者が投資家を始めた初日というなら、見てもいいだろうが。)

ロジャーズ氏は失敗と成功の経験をせがまれて、あるショート・ポジションの話をした。
それは、みんなが相場に強気になっている時の話。
ロジャーズ氏は弱気になり、全財産をはたいてプット・オプションを買ったのだという。
6か月後ロジャーズ氏の読みはピタリとあたった。
みんなは大損し、ロジャーズ氏は財産を3倍に増やしたのだという。
底でプット・オプションを売却した時を回想し、ロジャーズ氏はこうつぶやいた。


悪いタイミングだった。
純粋な幸運にすぎなかったんだ。

この成功体験が、ロジャーズ氏に二匹目のどじょうを狙わせたのだ。
仮説が成功した場合に再び同じパターンを狙うというのは、投資家として至極当然の行動だ。
しかし、ロジャーズ氏が2回目に挑んだのは、まったく同じトレードではなかった。

「『今回はプットを買うためにオプション・プレミアムを払いたくない。』
・・・6つの銘柄を全財産でショートしたんだ。
2か月後、全部持っていかれた。」

ロジャーズ氏はそのショートの失敗によって全財産を失ったのだという。
まさに投資家人生の危機に立たされたのではないか。
この日ロジャーズ氏は日頃から多用する「危機」という熟語を用いなかったが、まさにそれに類する経験を語っている。

でも、この話の本当の教訓は、2年のうちのその6つの企業がすべて倒産、文字通り倒産したことなんだ。
私がやっていたことは(ある意味)正しかったんだ。

日頃からロジャーズ氏は自分が最悪のトレーダーだと公言している。
ファンダメンタルズは読み切れているのに、タイミングまでは計れない。
もっとも、これは投資家万人に共通する問題だろう。
ロジャーズ氏は、タイミングの計り方を尋ねられ「自分が教えてほしい」と返している。
多くの失敗を乗り越えてきた投資家だから話せる本音をトクトクと語っている。

私はいつも早く動きすぎるので、判断したらいったん待つようにしている。
・・・それでもまだ早すぎるんだ。
判断を下すのが早すぎるため、(投資も)いつも早すぎる。
それは自覚しているんだ。

優れたファンダメンタリストであるがゆえに先の先の先まで読んでしまう。
しかし、トレーディングにおいては、それが逆に妨げになってしまうのだろう。
ロジャーズ氏の魅力とは、いくら稼いだとか、何本の指に数えられるとかいった話ではなく、聞くものの胸に迫るような率直な思いを飾ることなく語れるところにあるのではないか。


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