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アスワス・ダモダラン 私は十分年齢を重ねている:アスワス・ダモダラン

アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、FRBのコミュニケーションの問題点を指摘し、フォワードガイダンスによる金利コントロールが難しくなるだろうと予想した。


過去10年金利が低かったのは、インフレが低く経済成長が弱かったからだ。
債券買入れプログラムと『低金利を維持する』とのしゃべりは影響を与えたものの、限界部分のみの話だ。

ダモダラン教授が自身のブログで、過去10年続いた米国の低金利の主因について語った。
FRBが米イールドカーブをコントロールできると考える人からすれば、FRBが低金利を継続すると約束している今、金利上昇を心配する必要はないだろう。
しかし、教授はもちろん安心していない。
FRBがコントロールするのは(少なくとも現時点では)短期の政策金利(FF金利)だけであり、カーブのそれ以外の部分については「シグナル」を送るしかしていない。
ところが、シグナルを送ろうにも、すでに2つの制約が発生しているという。

  • FF金利はゼロ近傍にあり、さらなる利下げというシグナルに限界がある。
  • シグナルが機能するにはFRBが信用されていることが必要だが、FRBはそれを失いつつある。
    「もっとも有能な中央銀行家とは寡黙で、何かしゃべる時も多くを語らないものだと信じている。」

辛口のダモダラン教授からすれば、FRB幹部がしゃべればしゃべるほどFRBの信認が失われていくようだ。
確かに(他のツールが枯渇していくなかで)期待の操作に頼るのにはしかたのない面もあるが、あまりにも恣意的に期待を誘導しようというシーンも少なくない。
そういうシーンを見れば、賢い市場関係者は中央銀行の足元を見透かすようになるだろう。
ダモダラン教授は、今月のFOMCで示された経済見通しに言及した。

特に、FRB自体による2021年予想の実質経済成長率6.5%、インフレ率2.2%は、同時になされた低金利を維持するとの約束と相反している。
結局、両者を合計して、リスクフリー金利は8.7%との直観につながる。

理屈の分かる人ならおそらく全員が苦笑したポイントだろう。
ジェレミー・シーゲル教授もこの矛盾を指摘していた。
もちろん、実績の名目成長率と長期金利が常に時間のずれもなく一致するという理屈はない。
しかし、やはり密接に関連している。
一方が8.7%、一方が2%弱というのは奇妙だ。
この大きな差を中央銀行が埋めることができるのか、疑問に持つのも当然だ。
それが現実となるのかもしれないが、今のところFRBを大いに疑う材料にもなろう。

ダモダラン教授は、今年金利上昇が与える市場の影響についての2つの見方を紹介する。

  • 金利上昇は、プラス要因である経済回復による部分が大きく、プラスがマイナスを上回る。
  • インフレが顕在化すれば、市場が急落しやすくなる。

どちらに行き着くか、ダモダラン教授の予想はやや悲観的だ。
そこには多くの一般人も感じている背景があるようだ。

予見可能な未来、行ったり来たりが続くだろうが、実質成長率とインフレのデータが出てくれば、いずれかの見方が正しいかわかるだろう。
インフレが再発してもFRBにはインフレを抑制する力があると信じる一部の市場関係者とは異なり、私は十分年齢を重ねているので、インフレがどれだけ人目につかずやってくるか、一たび脅威となればいかに中央銀行が再びインフレを抑制するのが困難か覚えている。


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