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私たちはすでに最近それを見ている:レイ・ダリオ
2021年3月28日

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が、マクロで見て過大な財政政策が何をもたらすかを解説し、その節目となる現象が最近も起こったばかりと指摘している。


それは、何に対して過大かによるんだ。
(実体経済の)需給にとって過大かといえばおそらくYesだ。
過大になったのは、多くの人が大金を早く必要としたからだ。

ダリオ氏がYahoo Financeで、目下の米刺激策に対する考え方を語った。
マクロ経済のデフレ・ギャップを埋めるという観点からいえば、多くの慎重派が指摘するとおり、現状の刺激策は過大なものだろう。
その一方で、困窮する人の救済のための救済策としては過大とはいえない。

ダリオ氏は、パンデミックの前から、米国をはじめとして世界の多くの国で程度はどうあれこうした展開が進むと予想していた。
伝統的な金融・財政政策はすでにかなり吹かしてきており、一方で格差問題などは深刻化している。
さらなる資金を捻出しなければならないとすれば、MMT的な金融財政政策の協調を選択せざるをえないとの考えだった。
(この意見は、すぐにダリオ氏が補足するまで、世の中を驚かせ、MMT論者を喜ばせた。)

大規模に需給に働きかける政策が採られているが、これにリスクやコストがともなわないわけではない。
だから、市場の観点からいえば、これは大ごとだ。

ダリオ氏が「過大」な刺激策・救済策を是認したのは、他にお財布がないからだった。
しかし、それが望ましいやり方だとは思っていない。
以前から、米国は野放図に借金を増やすことをやめ、生産性向上に努めるべきと主張している。

誰かが借金をしたとして、その債務は生産性向上のために使われるのか?
もしそうならハード・マネーの形で返済されることになる。

例えば、インフラ投資において、公共性だけでなく経済への寄与も十分に見込まれる筋の良いプロジェクトがあれば、生産性向上に寄与してくれる可能性は高まる。
結果、生産が増え、税収が増え、国の借金も返せるだろう。
理想論とはいえ、あるべき公共投資の模範例だろう。

一方、公共性はあっても経済には寄与しない支出もありえ、それ自体を否定すべきものでない場合もある。
また、政治家、天下り官僚、それらに群がる業者のためのバラまきプロジェクトも悲しいかな存在するのだろう。
こうした場合、国の負担の多くはいびつな形で一部の経済主体に転嫁される。

実際の生産性向上につながらなければ、債券や現金の保有者が負担することになる。
現在はコロナ禍による非常事態であるとともに大規模なバラまき政治の状況でもある。
これは新たな政策であり、ここで終わるものではない。

ダリオ氏は、新たな政策パラダイムでは、インフレ税を通して、債券・現金の保有者が過大な負担を押し付けられると主張する。
日米のように、政府が自国通貨建てで借金できる国では、債務デフォルトが選択される可能性は低い。
つまり、政府債務が自国通貨建てで大きく減価する可能性は極めて小さい。
しかし、政府財政は確実に悪化しており、債務の価値が(タイムラグがあるにせよ)全く追随しないというのは不合理だ。
この不合理を解消するために、時期はどうあれ、貨幣の価値が低下する、あるいは通貨安が起こることになる。

ダリオ氏は、実体経済に原因のあるインフレと貨幣的なインフレを区別して考えている。
前者は財やサービスの需給(供給側の労働力を含む)に根ざしたインフレだ。
後者は、実体経済と直接には関係しないところで発生するインフレだ。

貨幣的インフレとは通貨やお金の価値が下がることで起こり、1970年代のスタグフレーションなどがそれだ。・・・
それが起こるのは、みんなが債券を保有したがらなくなるからだ。
私からすれば、現金や債権を保有するなんて相当ばかげたことに思える。

ダリオ氏が心配するのはこの貨幣的インフレだ。
総需要、総供給、フィリップス曲線とも関係が薄いタイプのインフレが起これば、中央銀行は、たとえ不況下でも金融引き締めを迫られかねなくなる。
ダリオ氏は、貨幣インフレが起これば、多くの中央銀行が二者択一を迫られると予想する。

  • 金利上昇を容認: 経済に悪影響を及ぼし、資産価格を低下させる。
  • 貨幣増発による債券買入れ: 貨幣的インフレをさらに悪化させる。

ダリオ氏は最近、経済・インフレが強い中で中央銀行が債券買入れを行わないか注視すべきと声を大きくしている。
これは、後者の選択肢が採られないか注視すべきとの含意であり、私たちは最近もそれを目の当たりにしている。
ダリオ氏は、投資家の注意が本質的でないところに向いていると心配する。

この株を見て、別のを見て、多くの人は大丈夫と言っている。
でも、私たちは、すべての市場でV字の底を見たじゃないか。
これが、債務とお金による力学が発揮された場合なんだ。
これが注目すべき最大の力学なんだ。・・・
(昨年)4月8-9日に、1971年8月15日や1933年3月5日と基本的に全く同じ政策が実施された。

昨年4月はコロナ・ショックに対する異例の金融・財政政策により市場が反転上昇を始めた時期だ。
1971年はニクソン・ショック、1933年はニューディール開始。
いずれも貨幣発行量についてのタガを外すような事象が発生した時を指している。


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