福沢諭吉先生が紙切れに:土居丈朗教授

慶応義塾大学の土居丈朗教授が、長く続く日本の財政拡大と日銀の国債購入について警告を発している。
現状を継続すれば、いつかインフレか金利急騰に見舞われる可能性が高まっていくという。


慶応の人間としてはあまり言いたくないが、福沢諭吉先生の肖像の1万円札が紙切れになるかもしれない。

土居教授がBloombergのインタビューで答えた。
すでに国債発行残高の4割超を抱える日銀が今後も買い入れを続ければ、6-7割に達するようになるかもしれない。
そうすれば、財政ファイナンスやマネタイゼーションとの性格が一層強くなる。
通貨を刷って歳出に充てるやり方は、財政破綻した国々で見られる手法だ。
財政従属に陥った日銀を見て、人々は円を嫌うようになるかもしれない。

「(インフレか金利急騰の)どちらかが急に起こる可能性はある。
日銀が国債を買い入れる度合いが高まれば高まるほど、発生確率は論理的に高まっている。」

土居教授はハード・ランディングのシナリオをこう語っている。
これは正しい。
確率は「論理的に」高まっている。
しかし、論理的に高まっているにすぎない。
こうしたハード・ランディングがどう起こるのか、その姿がはっきりしない。

問題とする「金利」を国債利回りとするなら、おそらく「金利」は急騰しない。
日銀はすでに非常時となれば最後の1円まで国債を買い入れる覚悟をしているはずだ。
だから「金利」は急騰することがない。
具体的には、主要な国債銘柄についてオープン・エンドで指値オペを実施することになるのではないか。


これは、インフレ昂進でも変わらない。
ここで想定しているのは円建て国債を円で日銀が買い入れる取引だ。
インフレで傷んだ円建て国債をインフレで傷んだ円で買い入れることになるだけだ。
だから、名目の国債利回りを一定に保つことは可能だ。

では、円や国債は安全なのかというとそうではない。
名目の国債利回りを低位に保ち、インフレが昂進した場合、実質利回りはマイナスに大きく沈む。
つまり、円や国債を持つことは購買力を失うことを意味することになる。
問題は金利ではなく、インフレなのだ。

では、金利は関係ないかというと、そうでもない。
国債以外のフィクスト・インカムのうち、日銀が買い入れないものについては名目利回りが高騰し、価格が急落することになろう。
株式についてもインフレが進めば、実質ベースでの利回りが悪化することは覚悟せざるをえない。
株式がインフレに強いのはマイルドなインフレの場合だけで、急激なインフレでは名目株価も悪影響を逃れえない。
仮にこうした商品まで日銀が買い入れを増やしだしたら、その時が合図になってしまうだろう。
国内の金融商品のたとえば過半を日銀が買いにいこうとすれば、これは日本経済が持続不可能な末期を迎えつつあるか、それとも持続可能な共産主義国家に変貌しつつあるかだ。
いずれも、それを好まない投資家はとても多い。

結局は、投資家は円を売って外貨に殺到するようになる。
お隣の中国で見られるような光景だ。
だから、将来どこかで日本が資本規制を敷かざるを得なくなるとの予想も囁かれている。

ただし、インフレはまだまだ来そうにない。
日本人はうまい具合に円の世界に封じ込められており、円以外の通貨を使いにくい状況にある。
仮に街中で円だけでなく外貨建ての商売が増えてくれば要注意だ。
円を持ちたくない人が増えている証拠になる。
幸い老いた国 日本がそこまでいく可能性は今のところ見えていない。


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