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社会内だけでなく世代間の公平を:ラグラム・ラジャン
2020年8月5日

IMFチーフエコノミスト、インド中銀総裁を歴任したラグラム・ラジャン シカゴ大学教授が、コロナ・ショック対策の財政出動について、世代間の公平という観点から精査すべきと述べている。


経済学者は、現在の低金利が、ソブリン債務が過去に比べてはるかに持続可能になっていることを意味すると主張してきた。
名目GDPが妥当な水準に戻り、金利が低位にとどまり、将来政府が支出を制限すると仮定するなら、これは正しい。
たとえ最初の2つの仮定が正しいとしても、3つ目の仮定の是非を考えるには現在の支出の質を見ないといけない。

ラジャン教授がProject Syndicateで、各国の財政悪化に警戒感を示している。

教授は決して財政政策をケチるべきと主張しているわけではない。
むしろ、やるべきことは積極的に行うべきと書いている。
しかし、そうだとしても、財政出動を行えば、その後には大きな債務が残るのが現実だ。
コロナ禍はまだ現在進行中であり、債務拡大が収まるめどはなく、経済回復を遂げて財政再建に転じるまでに長い時間がかかるだろう。
財政再建の困難さは債務規模だけでなく、趨勢的な社会・経済状況にも根ざしている。

「過去、こうした債務の返済は(今より)容易だった。
強い経済成長とは、それぞれの世代が豊かになり、過去の債務が所得に対して縮小することを意味していた。
しかし、今では高齢化、低い公共投資、弱い生産性向上のすべてが、子供たちが私たちより豊かになることを阻害している。」

こうした社会・経済状況が続くなら、将来の財政再建を困難にしてしまう。
いわゆる上げ潮派のロジックが成立しにくい状況だ。

こうした状況では積み上がった債務はどう扱われるのか。
ラジャン教授は淡々と予言する。

富裕税(厳しい反対、成長抑制的な緊縮への反対意見に合う政策)を導入したとしても、蓄積された債務の大部分は将来世代に転嫁されるだろう。・・・
世代間の公平は、今日生きる者にとって社会内の公平と同様に重要であるはずだ。

政府債務が過大になれば、増えた債務のすべてを今の世代で責任をもって処理することが難しくなり、次の世代に付け回すことになる。
ラジャン教授は、「世代間の公平」を重んじ「用心深く歳出の目標を設定すべき」と説く。
そのためには、歳出の中身を精査することが必要だ。
教授は、いくつかの論点を例示している。

  • すべての雇用を守ろうとするのではなく、労働者を保護するやり方に移行すべき。
  • すべての企業を救うのは非効率であり、市場に選別の多くを任せるべき。
  • 必要と判断される企業救済を行う場合、まず既存の債権者・株主が相応の負担をすべき。
  • 若い世代への投資を増やすべき。

現在、政府支出は必須だ。
しかし、単にソブリン債務市場がまだ極めて高水準の借入・歳出に不利な反応を示さないからといって、私たちの子供たちのために、後先を考えない行動を採るべきでない。


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