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社会保障の避けられない将来:アラン・グリーンスパン

アラン・グリーンスパン元FRB議長が、労働生産性の伸びの低迷に危機感を示し、望むと望まざるとにかかわらず荒療治が必要になると予想した。


データを見れば、生産性伸び率が劇的に鈍化しているのがわかる。・・・
生産性は上昇し、そして平坦化した。
この平坦化の基本的な理由は、社会保障の大きな増大が国内総貯蓄をクラウディング・アウトしたからだ。

グリーンスパン氏がBloombergで、数年来の持論を繰り返した。
近年この話題を話すことが多い同氏だが、それでもメディアに呼ばれるから、そのネーム・バリューは相変わらずだ。
また、94歳とは思えない明晰さを持ち続けている。

グリーンスパン氏が主張する「クラウディング・アウト」は、短期的な現象を指したものではない。
少なくとも10年、おそらく20年あまりの間に起こった現象を指している。

国内総貯蓄は企業投資の中核をなすものであり、企業投資から経済成長は生まれる。
最近の生産性の伸び率は年1%程度であり、以前より大きく低下している。
現在見られつつあるのは、中期的に緩慢な経済成長の時代に向かいつつあるということ。
私は、昨年までと同様の問題に逆戻りするとは考えていない。

これが唯一絶対の説明かどうかは別として、供給サイドからの説明としてすんなり理解しやすい内容となっている。
「昨年までと同様の問題」とはディスインフレを暗示するものかもしれない。

キャスターはこの日なかなかうまい繰り回しをした。
最近のジャネット・イエレン前FRB議長のビデオを持ち出したのだ。
そこでイエレン氏は、趨勢的停滞と貯蓄余剰を現状認識として挙げた。
趨勢的停滞はローレンス・サマーズ元財務長官の主張だし、貯蓄余剰はベン・バーナンキ元FRB議長の主張だ。
いわば、需要サイドを重んじるニュー・ケインジアン的発想なのだ。
キャスターは、素朴な疑問として、貯蓄は不足しているのか、余っているのかと尋ねた。
確かに、門外漢からすれば、こういう疑問ももっともだ。

グリーンスパン氏は、イエレン氏と長くFRBで一緒に仕事をし理解していると話した上で、一見相反するように聞こえるのは、同じことを異なる角度で見ただけのことと説明した。
その点について詳しい説明がなかったのは残念だ。

もちろん、貯蓄がたくさんあっても、クラウディング・アウトが貯蓄より速いペースで増加すれば、クラウディング・アウトが凌駕するのだろう。
そこで金利が上昇しないのは何とも気味が悪いが、確かにお金にはリスク資産に向かっていいお金と悪いお金がある。
老後を迎えた人たちがあてにする資金は、なかなかリスク資産には向かわないから、低金利とクラウディング・アウトが共存する可能性もあるのかもしれない。
ただ、グリーンスパン氏の解説がすべてをクリアにしているかは疑問だ。

一方、需要サイドから考えたがる人たちのロジックもなかなか薄弱だ。
趨勢的停滞も貯蓄余剰も現状を描写した側面が強く、ロジックが希薄で、あまり役立つ感じがしない。
結論はいつも金融・財政刺激策という話になりがちで、それは過去の失敗の繰り返しを連想させる。
世の中の多くの人が、構造改革や成長戦略の必要性を重く見始めている。

グリーンスパン氏は、コロナウィルスがどう経済に効いてくるかは予想できないと話す。
一方、高齢化については確度の高い、予想・推計が可能だという。
だから、それに対して行動すべきだと述べる。

社会保障を削減しないといけない。・・・
何をすべきか言えというなら、退職可能年齢を引き上げることだ。・・・
政治的にゼロ以下の可能性しかないのはわかっているが、それでもそうせざるをえないからそうなるんだ。

どう考えてもタイミングが悪い時に、どう考えても受けないことをいうのは、なみなみならぬ信念なのだろう。

アメリカ人はこういう意見を聞いてどう思うのだろう。
それでもキリギリスでい続けるのか。
それとも、ついにリカーディアンになるのだろうか。
仮にそうなれば、米国といえども日本化は避けられないだろうから、興味深い展開が待っているのだろう。


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