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相対的なマインドセットに取りつかれた市場:モハメド・エラリアン
2020年10月27日

アリアンツ首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、市場の楽観の背景にある相対的な投資選択について心配している。


まず不愉快だったのは、例えばAppleだ。
Appleは偉大な会社だが、同社は最小のコストで債券を発行し、その資金を経済活動拡大とは必ずしも関係ないことに使った。

エラリアン氏がBloombergで、コロナ・ショックにより講じられたFRBの市場救済策が本来の趣旨のために用いられなかった点を問題視した。
結果的に強い企業ほど政策の果実の恩恵を受けやすい。
同氏は、他にも同様の資金調達を行った企業は多いと指摘した。
本来弱い者を救うはずの施策が、強い者をさらに強くすることに用いられたのだ。

今回のQEは実体経済を助けるものではなく、錬金術(フィナンシャル・エンジニアリング)を助長するものだった。

エラリアン氏は、コロナ・ショックには格差を拡大する傾向があると指摘している。
さらに救済策まで格差を拡大する傾向がある。
もちろん、Appleら強者からすれば、単に資金調達に有利な市場環境で当然のことをしただけのことなのだろう。
エラリアン氏は、より対象を区分した支援策の必要性を説いている。

上記は、FRBの支援策の実体経済における問題点だ。
エラリアン氏は、市場においても問題点があるという。
実体経済での問題点を助長したのが、特にハイイールド市場で顕著だった「マインドセット」であり、それこそ「最も不愉快」だったという。

市場は完全に相対的なマインドセットに取りつかれている。
すべては人為的に抑制されている国債利回りに対するスプレッドで考えられている。
資産の相対的な魅力に基づき、人々はどんどんどんどんリスクを取るようしむけられている。

リスクフリー金利の代替として用いられる長期債利回りは、すべての資産利回りの基準値のような役割を持たされている。
コロナ・ショックが起こった時、当然ながらハイイールド債利回りと長期債利回りの差は拡大し、その後、FRBがフォールン・エンジェルを買い入れると発表すると縮小した。
市場は様々な資産クラスの中でイールド・スプレッドを比較し、「相対的な魅力」に基づき選択する傾向がある。
全体的水準は度外視して、これよりはこっちがいいから、といったように選択されることが少なくない。
多くの市場参加者が、国債バブルではないかと疑い、各種リスク・プレミアムが人為的に圧縮されていることに気づいているのにだ。

エラリアン氏は「絶対的な魅力」が勘案されていないと警告する。
同氏のいう「絶対的な魅力」とは、デフォルト・リスクに対して十分な利回りが得られるかということだ。
現在の市場は、このデフォルト・リスクを十分に意識していないのかもしれない。
エラリアン氏は、、相対から絶対へのマインドセット転換には時間がかかるとしながらも、仮にそれが起これば脆弱なものがより脆弱になると指摘する。

さらに、この危険性は資産クラスによって大きく変わってくるという。
その資産クラスが中央銀行の傘の下に収まっているか否かだ。

「例えば、新興国市場で問題が起こり返済不能になれば、FRBはその証券を買いはしない。・・・
つまり、傘の下にあるなら、政府・FRB・ECBがその債券を買ってくれるなら、(相対の議論には)意味がある。
それ以外、傘の外にあって、傘の下にあるものからの波及効果の恩恵を受けてきたものにとっては意味がない。」

中央銀行の傘の下にない資産クラスでは、過去見られた波及効果のようなものを過度に期待すべきでない。
その資産自体の安全性を見なければいけないとの指摘だ。

エラリアン氏は投資家に選択を迫っている。

これは最終的にはあなたが世界経済をどう見るかによる。
V字回復を遂げるのか。
私が心配するようにルート型、回復が鈍化し、不幸にも破綻を回避するのに不十分な水準にとどまるのか。


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