白井さゆり教授:追加緩和を求める声は皆無

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昨年3月まで日銀審議委員を務めた白井さゆり慶應義塾大学教授が、海外の中央銀行・政府・学者の論調を伝えている。
リフレ政策にやり尽し感が高まり、これまでにない幅広い意見が語られるようになってきているのだという。


かつてはもっと金融緩和すべきとの声もあったが、今はほぼ皆無。
効果がないのであれば、他の政策、たとえば財政拡大・成長戦略をすべきだという声がある一方で、もう低いインフレ・低い成長率を受け入れたらどうかという議論さえ出てきている。

オーストラリアの国際会議から帰国したばかりという白井教授はテレビ東京の番組で海外の中央銀行・政府・学者の空気を紹介した。
日銀審議委員時代、白井教授は政策委員会の中で相対的にタカ派寄りのスタンスであったから、この話にもバイアスがかかっている可能性はあろう。
しかし、少し昔まで欧米はリフレ至上主義とでもいうような雰囲気であり、こうした話すら出てこなかったのだから、これは大きな変化だろう。
潮目が本格的に変化しうるということではないか。

楽観的な市場とはうらはらに、彼らはいくつかの謎に頭を捻り、不安を感じているのだという。

  • 雇用改善の中での低い賃金上昇率、低インフレ
  • 企業・家計による現預金の保有増加
  • 経済成長を見込むなら株式投資でキャピタル・ゲインを狙ってもいいはずなのに、配当狙いの投資が多い
  • 不動産価格が一部のみ局所的に上昇する例が多い
  • 政府・家計の債務が拡大

インフレにこだわる真っ当なワケ

目先の景気については、現状が一時的な回復であって、今後悪化すると心配されている。
白井教授は日米欧の実質金利が長期的に下降傾向にあり、それが経済の潜在成長率の低下を反映したものと示唆した。
循環的な変動の中で景気後退に転じた時、金融緩和のアクセルを目いっぱい踏み込んできた中央銀行には残された手段がほとんどない。
将来の利下げ余地を作っておくには名目金利を高めておく必要がある。
しかも、金融を引き締めずに名目金利を高くしたい。


「中央銀行が物価目標にこだわる理由は、これから起こりうる景気後退の時に金融緩和の余地を作っておきたいため。
国債買入れ・マイナス金利といった非伝統的な政策は明らかに副作用が大きい。
長くやりすぎると効果が低下してしまうので、そういう政策はできるだけやめたい。」

金融緩和とは、市場の実質金利を経済の中立金利より低位に保つことである。
つまり、実質金利を低く保ちたい。
一方で名目金利を高くしたいなら、両者の差であるインフレ率を高めるしかない。
だから、中央銀行は物価目標にこだわっている。

(次ページ: 中央銀行は何をやっているのか?)

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