白井さゆり教授:これ以上恵まれた年はない

昨年3月まで日銀審議委員を務めた白井さゆり慶應義塾大学教授が、日銀も早期に金融政策正常化を進めるよう説いている。
このままで数年後に景気後退局面を迎えれば、日銀に金融緩和の余地は小さく、経済・金融・市場の不安定化を招きかねないという。

白井教授は金融正常化について量と金利の観点から次のように定義している。


  • 量: 国債・ETFの買い入れをゼロにしていく(テーパリング)。
  • 金利: 10年金利のターゲットを現行の0%から引き上げるかレンジを設け柔軟化する。

こうした正常化のタイミングについては大きく3つの意見に分かれるという。

  • できるだけ早く
  • 2019年以降(多くのエコノミストの考え)
  • 2%物価目標の安定的実現後(現状の日銀のスタンス)

白井教授は1つ目の意見で、今から遅くとも来年前半までには正常化を始めるべきとしている。
教授は2つ目の意見を「多くのエコノミストの考え方」と語ったが、このニュアンスは注意して聞かなければいけない。
多くのエコノミストが《そうあるべき》と考えているとは限らず、《そうなるだろう》と予想しているというのが実態だろう。


目途もなく出遅れる日銀

いずれにせよ、白井教授は《善は急げ》と考えており、理由を3つ挙げている。

  • 今年はチャンス
    世界経済が上昇局面にあり、五輪効果で民間の活動水準も高く景気がいい。
    「これ以上、恵まれた年はない。」
  • 副作用
    国民には見えにくいが、現行の金融緩和には副作用も大きい。
    資産価格の歪み、財政規律の緩み、企業の新陳代謝の停滞。
  • 先のための金融緩和余地
    2019年には消費増税の影響がなくとも景気減速の恐れがあり、五輪後は景気後退色が強まるかもしれない。
    その時再び資産買入れで経済を支えるために、今のうちに金融緩和の余地を作っておきたい。

「アベノミクスはいい政策をたくさんやっているが、潜在成長率の引き上げ、賃金あるいは長期予想インフレ率の上昇期待などは得られていない。
需要にもとづくインフレにはなっていない。」

コアコアCPIが1%にも届かない現状を教授はこう説明する。
リフレ派の一部には、インフレならば中身は何でもいいとの極論も見られるが、教授はデマンド・プルのインフレこそが求められていると考えているようだ。

(次ページ: 一か八かの議論がはびこる)


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