海外経済 投資

現金・債券は世界で最も割高な資産:ブリッジウォーター
2021年1月31日

ブリッジウォーター・アソシエイツのボブ・プリンス共同CIOが、同僚レイ・ダリオ氏が思い描く世界市場の構図についてわかりやすく解説している。


現在、世界で大きな富のリバランスが起こっている。
それは、西半球と東半球、アジアの間のリバランスであり、資産保有者と債務者の間のリバランスだ。
私たちが言っているのはその一部だ。

プリンス氏がBloombergで、ダリオ氏の「現金はゴミ」発言について尋ねられている。
同氏がまず語ったのは、現在起こりつつある大きな絵だった。
慢性の双子の赤字に苦しむ米国から経常黒字に支えられた債権国へのマネーの流れである。

プリンス氏は、現金のリターンに注目すべきと話す。
現金のリターンは名目ではゼロだが、インフレがあれば実質ではマイナスになる。
プリンス氏は、現在「大きな富の破壊が起こっている」という。
これは、資産保有者を苦しめ、債務者に恩恵を及ぼす。

Tビルや現金のようなものを保有しているなら、すでに資産の購買力は15%低下している。
計算すると、今後10年でさらに30-35%(低下する)と予想される。
歴史を振り返ると、現金はこのような環境では最もリスクの高い資産だ。
1930年代とそれ以前には、現金保有のドローダウンは50、80%にも上った。
それが今や債券にも広がっている。

プリンス氏は現金・債券を「世界で最も割高な資産」であると指摘している。

思えば、こうした状況は各国の金融緩和の狙いそのものでもある。
債務者を助け、信用創造を後押しし、経済を刺激するというのが、本来の金融政策の建前だ。
さらに最近ではリフレまで望まれている。
現金・債券を「破壊」し、それら保有者に投融資を促すことこそ、金融緩和の手段だったはずだ。

金融緩和は悪者ではなかったはずだ。
実際、今でもリスク資産への投資家は金融緩和を歓迎する人が多い。
ではなぜ今問題点が強く感じられるのか。
そこには、金融緩和の期間、追加緩和余地の枯渇が関係しているのだろう。
金融緩和はそれを強めている間はリスク資産にも実体経済にもプラス効果が生じやすい。
しかし、余地がなくなり巡航速度になるとプラス効果は低減していく。
かといって、緩和を後退させれば巻き戻しに苦しむことになる。
こうした状況から金融緩和が長引けば、現金・債券保有者の被害は拡大する。
そうこうするうちに、上昇を続けてきたリスク資産の価格は弾けてしまうかもしれない。

プリンス氏は、ドルが金・ユーロ・円・人民元などに対して弱くなっている背景を解説する。

マイナスの実質リターンが富を破壊している。
それが(現金・債券に置かれていた)流動性を他の資産に移動させている。
また、すでに起きているが、ドルから外の分野に移動させている。

最近のドル安については、米国の2つの特殊要因が指摘されている。
米国が莫大な経常赤字を続けていること。
コロナ・ショックへの政策対応の規模で、米国が抜きんでていること。

プリンス氏は、ドルが発行されてから辿る長い旅路について解説する。

「お金とはその国で印刷され、当初はその国内で国内資産を押し上げる。
その後ある時点で利回り・通貨が魅力的でなくなると国外へ移動する。
世界中の政府系ファンドがどこにあるかというと、米国ではない。
アジア、中国・韓国・シンガポール・香港、オーストラリアに存在している。」

米国は、他国に売るより多く他国から買っている。
その差額を支払うためにドルを発行する。
作って売らなくてもつじつまが合うのだから、これは米国にとって《途方もない特権》だ。
ただし、この構図が持続可能ならばの話だ。
もしも持続可能でないならどうなるのか。
これまでの歴史が指し示すのはドル安だ。

プリンス氏は、債権国側からどう見えているかを代弁する。

お金があるのはそういう場所(上記債権国)であり、彼らがドル資産を保有するのはリスク・ポジションになる。
ドル債で50-100 bpのリターンを得ても為替で6-12%も損を出している。
米財務省が米国債を発行するのに対し、彼らは買い続けるだろうか。

債権国は一生懸命作り、売り、ドル資産を積み上げても、ドル安によって《債務減免》を迫られてしまう。
ならばドル資産を買うのをよそうと考えるのも当然だ。
仮にそうなってしまえば、米国は、もちろんすぐにデフォルトとはならないものの、金利上昇・ドル急落に見舞われ、経済は容易に浮かび上がれなくなる。
そうならないために、他の買い手を探す必要がある。

これが、FRBに国債買入れのプレッシャーを与える。
今起こっているのは、経済成長が上向き、インフレが上向き、長期金利が上昇するにしたがい、国債買入れをせざるをえなくなるということ。
これはドルにとって危険な状況だ。

金利上昇やドル安を防ぐための施策が再びインフレを刺激する。
インフレは実質リターンをさらに深くマイナス圏に沈ませる。
これがドル安要因となり、金利上昇懸念を深刻なものにする。
プリンス氏が心配するのは、こうした自己強化的サイクルであろう。


-海外経済, 投資
-, , ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 その他利用規約をご覧ください。