JPモルガンのジョン・ノーマンド氏が、来年の市場環境を予想したほか、下げのリスクに備えるためのヘッジ手段について解説している。
ワクチンが実際に施される時まで、おそらくさらなる財政の緩和が大衆に対して採られるだろう。
ノーマンド氏がBloombergで、来年に向けてのシナリオを展望した。
短期的にはウィルスによるロックダウンなどが経済・市場の障害となりうるが、それが大きな方向性まで変えることはないだろうという。
同氏は、2021年を次のように予想する。
- ほとんどの先進国市場・新興国市場の経済がトレンド成長率より速いペースで(貨幣)増刷を行う。
- 金融政策は緩和のまま。
- 財政政策は少し足を引っ張るが、トレンドより成長率を引き下げるほどではない。
金融資産にとってとても印象的な環境になる。
もちろん金融資産の中には価格が上がっているものもあるが、上がった価格は来年価格下落を引き起こすのではなく上昇の制約になるという部類のものだ。
直接的に強気予想を述べるのを避けているノーマンド氏だが、文脈から見て強気なのは明らかだ。
一方、キャスターの興味はむしろ市場が今後下げないかの方に寄っていたようだ。
ヘッジ手段としての現金保有について尋ねている。
ノーマンド氏は、現金保有について否定的だ。
多くの現金を保有すべきではない。
単純に、世界経済がトレンドを超える成長をする時はいつも、株式市場のバイアスが高まり、クレジット・スプレッドのバイアスはタイトになるからだ。
ノーマンド氏によれば、経済成長に強気の予想をするなら現金や先進国の国債は不利になるという。
これはヘッジの観点ではなく、リターンの観点からの説明だ。
では、ヘッジの観点ではどうなのか。
でも、問題は、現金をいくらか保有すべきか、だろう。
私の答は、保有すべき、だ。
単純に、先進国市場の債券利回りがすでに低い環境では、金融市場は極めてヘッジするのが困難になるためだ。
債券利回りがゼロ近傍になり低下余地が見込みにくくなると、債券のヘッジ手段としての効果がなくなってしまう。
さらに、長い債券には金利変動にともなうリスクも存在する。
それならば、名目価格が変動しない現金がいいという話になる。
ノーマンド氏は、現金をどれぐらい持てば良いのかにも触れている。
来年リスクを限定する唯一の方法は、少量、おそらくポートフォリオの数%にしても、小さい現金ポジションを持つことだ。
フル・インベストの機関投資家にとって数%は意味のある数字なのだろうが、個別銘柄でポートフォリオを組み立てている一般の投資家にとって数%は《現金を持つな》に近い。
それほど現金は嫌われているのだ。
そう考えると、レイ・ダリオ氏の「現金はゴミ」発言も、決して乱暴な話ではなかったのかもしれない。
この小さなパーセンテージは次の疑問を生み出すことになる。
現金が数%しか持てないなら、他のヘッジ手段には何がありうるのか。
ノーマンド氏は、推奨はしないものの次善の策として、円、スイスフラン、金、そしてまだ金利が存在する米国債を紹介している。