海外経済 投資

現金がゴミ箱から出される時が近い:ビル・グロス
2021年6月2日

ビル・グロス氏は、近いうちにFRBの金融緩和継続スタンスが変更されるとし、現金がゴミ箱から出されることになると予想している。


正直に言おう。
1970年代初めに信用が金本位制から解放されて以降の半世紀にわたって債券の王・女王だったのはFRB議長だけだ。・・・
変化を起こすのに十分なお財布をもって債券市場を動かすことができた投資家はいなかった。

グロス氏がFTへの寄稿で、過去半世紀の債券市場を自在に操ることができたのがFRBだけだったと話している。
米ドルという世界の主要準備通貨を支配する存在だったからであり、弱くなることはあっても、米ドルがその地位を守り続けているからだ。

なぜ「正直に」言ったのかといえば、グロス氏がかつて長く債券王と呼ばれた、影響力絶大な債券投資家だったからだ。
自分は債券王と呼ばれていたが、本当の王は他にいた、というわけだ。

グロス氏は、FRBの絶対王座に変化が起こるのではないかと考えている。

独特なパンデミックの環境のために、パウエル議長が保守的な装束を着替え、カオス的な将来の経済・市場の可能性を解き放ったのではないかと私は考えている。・・・
5兆ドルの財政政策、FRBの現状の短期金利ゼロと月1,200億ドルの債券買入れのパッケージが、経済成長・インフレ・金融市場を合理的目標を超えて動かし、最終的にコロナ後のノーマルを危うくするのではないかと考えている。

グロス氏は、リモート・ワークやリモート会議の普及が労働市場を大きく変化させる可能性があるという。
二度と失業率がパンデミック前の4%前後まで戻ることがないかもしれないという。
もしもそうなり、FRBがあくまで4%を目指すなら、金融政策は永遠に緩和的なままに据え置かれることになる。

「財務省は、2兆ドル、3兆ドル、4兆ドルの財政赤字のためのほぼ無コストのファイナンスを、いつまでドルを沈没させることなくFRBに要求できるだろう?
過去の金本位制の世界ならばフォートノックス(金貯蔵庫)ははるか昔に空で、世界の準備通貨の破綻を示唆していたはずだ。」

あくまで雇用を優先しインフレに厳しくあたらないなら、いつかインフレまたはドル安が訪れるとのオーソドックスな推論だ。
すでに、米国債利回りは期待インフレより低い状態にある。
つまり、実質利回りは(最長の30年まで)マイナスだ。
これが「経済成長・インフレ・金融市場」を刺激し続ける。

グロス氏は、これほどまでに低い金利、特に長期金利の原因についてコメントしている。

  • より低い金利の国があり、相対的な魅力がまだある。
  • ロール・ダウンを見込み、「1.65%利回りの10年債が2.40%以上のトータル・リターンを稼ぎうると信じている。」
  • FRBの債券買入れ。

グロス氏は、後者2つを「投機」と考えているようだ。
ロール・ダウンでリターンを得るには、イールドカーブがほとんど上昇しないことが前提になる。
FRBの債券買入れは永遠に続くとは限らない。

こうした投機は、ドルの安定や、予見可能な将来において短期金利を変えないというパウエルの約束の一貫性に依存している。
今後数か月の間にこの希望は、インフレ圧力が米国債と株式に価格リスクを課すにつれ、おそらく失望にかわるだろう。

FRBは長い間、現在の政策金利を維持し、バランスシート、したがって民間銀行の準備預金を月1,200億ドルのペースで拡大することはできない。

債券王の頃のグロス氏が蘇ったよう。
こういうメリハリの利いた予想を述べる人だった。
必ず当たるわけではなかったが、全盛期には多くの投資家を味方にしバンドワゴン効果を発揮したものだ。

金融政策はどうあれ、数か月のうちに再び金利が動き始め、債券だけでなく株式にも脅威になるとの予想だろう。
グロス氏は、米10年債も株式も同じ「『リスク』資産」カテゴリーに分類されると書いている。
では、リスクを避けるにはどうしたらいいのか。

現金は数年間ゴミだった。
しかし、まもなく、永遠の低利回りや債券王・女王の助けといった不合理な期待を抱く投資家にとって唯一の避難場所になるかもしれない。


-海外経済, 投資
-, , ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 その他利用規約をご覧ください。