ベア派エコノミストのデービッド・ローゼンバーグ氏が、一部で囁かれる21世紀の「狂騒の20年代」シナリオに強く反論している。
エコノミスト、ブルームバーグビジネスウィーク、マネーウィークの3誌がカバーストーリーで狂騒の20年代を特集しているのを知っているだろうか?
私は全キャリア中で、ウォール街の識者や主流メディアがこんなおとぎ話を取り上げるのを見たことがない。
ローゼンバーグ氏がFinancial Postで、市場の根強い楽観を警戒した。
1920年代はプロ・ビジネスなカルビン・クーリッジ政権の下で経済が拡大、株価も上昇し「狂騒の20年代」と呼ばれた。
(1929年に株価が暴落し「狂騒」は終わり、恐慌へと転じた。)
ちょうど100年が経ち、これから再び「狂騒の20年代」が始まるのではないかとの見立てが流行っているようだ。
しかし、ローゼンバーグ氏によれば、1918-20年のスペイン風邪と今回のコロナウィルスを除けば、2つの時代には類似性はないという。
したがって、狂騒の1920年代のような世界的ブームが起こらないばかりか、むしろ積み上がった債務の解消に苦労するようになるという。
ローゼンバーグ氏は当時と今の違いを列挙した。
- 当時、米国は世界の製造業のシェアの半分を占め、需要拡大の恩恵を受けやすかった。
- 当時はパンデミックでも、人々は政府に助けを求めなかった
- 当時の債務対GDP比率は10%と低く、法人税の最高限界税率も10%、13.5%、11%と低く推移した。
- 当時は地方経済の都市化が進んでおり、経済成長に寄与した。
- 当時は経済において「不可欠ではないもの」の割合が10%未満(今は70%超)。
「経済は(閉鎖できない)『不可欠』な産業に重点が置かれており、乗数効果を他の経済にも及ぼしていた。」 - 人口動態に活気があった。
- 企業が金融工学でなく資本ストックの向上(生産性向上など)に注力していた。
「インフレを望ましい結果と見るのは今日だけだ。
今日の中央銀行は、債務者を救済し預金者を罰することばかり考えている。
しかし、インフレが実質購買力を侵食することを中央銀行は語ろうとしない。」
ローゼンバーグ氏は、1920年代には生産性も労働人口も伸びていたと指摘。
さらに、緩やかな物価下落を容認したことで、購買力を大きく下支えしたという。
今よりはるかに実質経済成長に有利な環境だったのだ。
狂騒の1920年代のダウ平均
ローゼンバーグ氏は米株価についても言及する。
20世紀の「20年代」では、1929年のクラッシュ前までに株価は約3.5倍に跳ね上がった。
しかし、当時の起点のCAPEレシオは6倍未満であって(現在の)35倍ではない。
金利(差)を調整したとしても、現在の市場は狂騒の1920年代が始まった頃の2.5倍も高い。