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牡牛vs熊:ジェレミー・シーゲルvsデービッド・ローゼンバーグ
2021年1月23日

CNBCが、グレート・ブルとグレート・ベアのインフレ/デフレに関する論争を演出しているので、その要点を復習しておこう。


大きな違いは、現在のFRB(バランスシート)拡大とCARES法が実際に銀行口座にお金を入れるという点だ。・・・
金融危機(リーマン危機)の最中にやったのよりはるかに大きな金額が入金されている。

永遠のブルにしてインフレ予想派のシーゲル教授が予想の根拠を説明した。

リーマン危機後、FRBはゼロ金利と量的緩和を実施し2%物価目標の達成を目指したが、思うようにインフレは進まなかった。
ゴールが近づいたのは2017年からのトランプ政権による財政政策の実施以降だ。
これが、物価目標の実現可能性についての1つのヒントを与える。

量的緩和とは、中央銀行と銀行が当座預金残高と国債等を交換する営みだ。
これでは、市中に流通するマネーは増えない。
これを増やすには銀行が受け取った当座預金残高を貸出に振り向ける必要がある。
もっとも、銀行からすれば、貸せる先があればとっくに貸しているというところだろう。
マネーは増えず、貨幣現象としてのインフレも起こらない。

ところが、ここに財政支出が組み合わさると話は違ってくる。
政府が国債を発行し、市中銀行が引き受け、その後中央銀行が買い入れる。
事実上のMMTが実施され、さらに政府がそのお金を支出すると、そのお金の所有者は政府でも中央銀行でも銀行でもなく、企業・個人となる。
ここでマネーは市中に流通するのだ。

シーゲル教授は、昨年のM2の増加が過去150年で最大の規模だったと指摘し、今年経済が再始動するにつれ債券市場に変化が起こると予想する。

「今年経済が再始動するにつれ、債券保有者は言い出すだろう。
『ドルがみるみる減価するのなら、1%の利回りではもう投資しない。』
彼らはより高い利回りを求めるだろう。
だから私は米国債に対して大いにベアなんだ。」

一方、永遠のベアとも呼ばれるローゼンバーグ氏は、インフレ/デフレに関しては希少価値のあるデフレ派だ。
いくつか根拠を示している。

  • インフレ圧力よりデフレ圧力が勝っている。
  • マネーサプライだけでインフレを予想することはできない。
    貨幣の流通速度はマネーサプライが増大するにしたがい低下している。
  • 現在の刺激策を完全雇用の時に講じられたかのように考えてはいけない。
    GDPギャップが大きい(供給能力に大きな余剰がある)。

どこかの国に「デフレは貨幣現象だ」と強言し、8年近くかけても物価目標にかすりもしなかった首相がいた。
そうした現実を目の当たりにした人々からすると、ローゼンバーグ氏の意見にも相応の説得力が感じられるはずだ。
ポイントは、シーゲル教授がいうように、単なる量的緩和だけでなく、異例の規模の財政出動が行われた時に、それでもインフレ/デフレが貨幣現象の性質を見せないかにある。
仮に完全に財、サービス、労働の需給で決まるなら、コロナ前後で需給が大きく変化するともいいにくいから、大きなインフレ圧力とはならないのだろう。

ローゼンバーグ氏はやや独善的な言い回しさえ用いて、インフレ予想を攻撃している。

私たちは今大きな穴から這い出そうとしているところだ。
専門家という人たちがどう言おうが、インフレは推進しない。
日本型のデフレが起こらないようにしている程度なんだ。

ローゼンバーグ氏は、リスク資産に対してベアであり、インフレ/デフレに関してデフレ予想派だ。
しかし、同氏のデフレ予想を聴いても、株式投資家は株式にブルにならざるをえない。
マネーの流通先には2つある:
実体経済と金融市場だ。
実体経済で貨幣の流通速度が減少するという現象は、特に米市場においては、マネーが金融市場に集中するとの連想を与えるはずだ。


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