米ドル

無責任・傲慢とトリフィンのジレンマ

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Reutersが『次の金融危機、引き金は「通貨」か』と題するコラムを掲載している。
トリフィンのジレンマをテーマとする内容なのだが、伝統的なテーマを今とりあげたのはなぜなのかと勘繰りたくなる。


トリフィンのジレンマとは、基軸通貨である米ドルが直面している相反する状況を指す:

  • 基軸通貨であるためには、経常赤字を通して、ドルを世界に供給しなければならない。
  • 経常赤字を続ければドルの信認が揺らぎ、基軸通貨としての役割を果たせない。

トリフィンのジレンマは、ブレトンウッズ体制が抱える矛盾を説明する目的で1961年という昔に唱えられたものだ。
この古来の問題をReutersが今取り上げているのはなぜなのか。
例示されたシナリオはこうだ。

「米国の何かしらの無責任さや傲慢さのせいで、中国政府が我慢の限界を超え、膨大に蓄積したドル建て資産の一部を売り始めたら、どうなるだろうか。
他国もこれに倣い、相対的に安全だと思われている通貨に殺到するだろう。」


中国がドル資産を売却するとのシナリオであり、その原因は米国の無責任・傲慢と仮定されている。
国際社会のルール・慣例を尊重しないトランプ政権の動向が懸念されているのである。
中国が(おそらく米国債を)売れば、墜ちるナイフをつかもうとする奇特な投資家は多くないだろう。
ドル資産が売られ、ドルが売られれば、通貨高に見舞われる輸出国にはダブル・パンチだ。
過去の輸出の対価であるドル資産は減価し、通貨高で今後の輸出も振るわない。

「すると、日本やスイスといった国に政治的な不満が生まれる。
資本移動が制約され、国際貿易がしぼんでしまう。」

米国にとって通貨危機とは借金踏み倒しの側面がある。
借金を踏み倒せるなら悪いことではないが、もちろんいいことばかりでもない。

「米連邦準備理事会(FRB)はドルの価値を守るために金利を引き上げるだろう。
レバレッジをかけていた投資家は売りを余儀なくされ、市場は混乱に陥る。
大手銀行も破綻しかねない。」

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