ハワード・マークス

 

無知の知と「いつ」:ハワード・マークス

Oaktree Capitalのハワード・マークス氏が、市場サイクルと投資について話している。
投資が精神戦であることがよくうかがわれる話になっている。


私たちが知ろうとしているのは、市場心理が高すぎ、楽観が行きすぎ、結果として無分別な振る舞いが起こる瞬間だ。
無分別な振る舞いが起こると、好ましい予想に基づき価格が上がりすぎ、リスキーな世界になる。

マークス氏がReal Visionのインタビューで、市場サイクルに関連して2000年のドットコム・バブルを回想した。
主戦場とするディストレスト債/ローンをはじめとするクレジット市場は、バブル崩壊後の2002年に最高のチャンスがやってきたのだという。
借金を膨らませた通信会社やスキャンダルの発覚した企業などが絶好の買い場を作り出し、その後市場は回復をした。

市場が好調な中で、マークス氏が再び舵を切る時が訪れた。

「2005-06年パートナーのブルース・カーシュと私は、出来た注文について一日中ぶつぶつ言っていた。
どんなばかげた注文でも出来たんだ。
投資家が慎重さを停止することは危険なことだ。
みんなが適度に懐疑的でリスク回避的である慎重な市場では、出来ない注文があるものなのに、当時の環境ではみんな出来たんだ。」

マークス氏は、こうした市場環境を「大きな兆し」と捉えたのだという。
投資家の旺盛な食欲に危険を感じ、保有資産の縮小に転じる。
運用していた大型のファンドを清算し、小さなファンドに切り替え、投資基準を厳格化したのだという。

マークス氏は、市場サイクル終期の勝者・敗者について印象的な話し方をする。

あまりにも多くの人たちがあまりにも多くのお金を持っていて、それを何かに投資したがっている。
入札はエキサイトしすぎ、入札の勝者は実際には敗者になってしまう。
慎重さに欠く行動をとっているからだ。

マークス氏は、日単位とは言わなくとも、かなり正確にサイクルを読み切ったのだ。
しかし、これは同氏の日頃の言葉とやや反する感がある。
マークス市は常々、マーケット・タイミングは不可能と言っている。


「1970年代初めに私が最初に学んだ偉大な投資の格言は
『早すぎるのは間違いと同じこと』
だった。
でも、私たちはこれを甘受していくしかない。
私たちの商売では、賢くて何が起こっているかわかるセンスを持っていても、『いつ』はわからない。
『いつ』を知っていると思っている人は大きな問題を抱える傾向がある。」

つまり、わからないことを前提として行動をしているのだ。
「いつ」をピンポイントで言い当てることができないとしても、予想の確率を上げることはできるかもしれない。
そのために市場をつぶさに観察し、市場サイクルをイメージしているのだ。
マークス氏は、画一的な予想をしているわけではない。

そうした努力の上で、果敢な行動が必要になるとマークス氏は話す。
しかも、ほかの人たちより一歩先に行動することが必要だ。

「ある理由で私は経験から、間違えることを恐れないでいられるようになった。
チャンスが間違いである危険は承知している。」

マークス氏は確信することはなく、いつも間違いを恐れながら行動していると言う。
同氏流の無知の知の実践なのだ。
マークス氏は「相場の神様」と呼ばれたヘンリー・カウフマンの言葉を紹介している。

「ヘンリー・カウフマンは言った。
『大損する人には2種類がいる:
何も知らない人と、自分がすべてを知っていると考えている人だ。』
私はどちらにもなりたくない。」

こうした教訓を実践すれば投資家として成功できるのか。
そうではないようだ。
その先には、忍耐が必要とされると、マークス氏は話している。

これらすべてを受け入れるとしても、つまり何が起こるかを考え、行動を起こさなければいけないことを受け入れるとしても、それが正しい行動であったことがわかるまで長い期間待たなければいけない。
・・・賢い者は早く動くが、(結果を)待たなければいけない。


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