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災害救助であって刺激策ではない:ケネス・ロゴフ
2021年1月28日

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授が、まだ財政再建を心配するような時期ではないとしながらも、コロナ後に訪れる困難な状況について予想している。


今は戦時中だ。
こういう状況では必要なことは何でもやり、お金のことは後で考えるものだ。
一番不都合なのは、おそらく格差に対処するための課税・分配の強化が必要になる点だろう。
しかし、短期的には、市場が許す限り財政赤字を継続する以外にほとんど選択肢はない。

ロゴフ教授がBloombergで、現在世界が置かれた状況を説明した。

ロゴフ教授は『国家は破綻する』の著書で有名だが、決して緊縮論者ではない。
経済が悪化した時には財税・金融ともに拡張すべきとするニュー・ケインジアンだ。
一方で、平時には次の危機に備えて政策を正常化しておくべきとの考えをもっている。
教授はコロナ・ショックを、リーマン危機よりも悲惨な、大恐慌以来最悪の危機だと考えている。

元IMFチーフ・エコノミストにして世界的なチェスの名手でもあるロゴフ教授の頭の良さは飛びぬけている。
発する言葉1つ1つに意味があり、無駄がない。
語りに堅苦しさはないが、それでいて文語としても成立している。

パンデミックはまだ終わっていない。・・・
これは災害救助であって、まだ刺激策ではないんだ。

ロゴフ教授は、かねてから政策対応には段階があると言ってきた。
パンデミックの最中は、困窮する人たちを救うこと、パンデミックから脱することに注力すべきと説く。
米国では最近の財政出動を《刺激策》と呼ぶ風潮があるが、これは適当ではない。
今経済刺激を行っても、経済が再始動できないうちは配られたお金は銀行口座やリスク資産に向かうだけだからだ。

Bloombergは、悪化した財政をどう立て直すかについて尋ねているが、ロゴフ教授は、それを考えるのは時期尚早と答えている。
戦争、大災害で国民が苦しんでいる時に先を心配しても、今やるべき行動が変わるわけではないからだ。
とはいえ、いつかはパンデミックは終わる。
教授は、その時のことをこう予想する。

「戦時経済から脱却するにしたがい、永遠に戦時中のやり方を続けるわけにはいかなくなる。
単に財政赤字を続けるだけで、社会問題、環境などすべてを解決することはできない。
いつか、どれをやり、どれをやらないかの選択を迫られることになる。
先述のとおり、格差問題に対処するために課税・分配を強化し政府のサービスを増やすことになろう。
困難な道になろうが、その方向に進まざるをえない。」

世界の先進国の中で最も小さい政府を持つ米国。
少しずつ日本、そして欧州のように政府を大きくしていくことになるのかもしれない。
ロゴフ教授の日頃の発言からすれば、それはむしろ望ましい方向のように感じられる。
しかし、教授はその変化が「困難」なものになると予想している。

財政悪化がシステミック・リスクのような事象を引き起こさないかとの質問に対し、ロゴフ教授は1つのシナリオを示している。

金利がこのように低いうちは政府は大きな力を持ち状況に対処できる。
もしもいつか、例えば、アジアが持続的にはるかに速い成長を実現し、欧米が実現できなければ、最終的には大きなストレスが加わり、金利が上昇するだろう。

先進国の中には、日本を初めとして大きな政府債務を抱えた国も多く、コロナ・ショックでさらに大きく悪化した。
こうした債務過多の国より魅力的な国が現れれば、これまでもそうだったように、マネーは債務過多かつ低金利の国から魅力的な国へと流れる。
結果、債務過多の国では金利が上昇し、政府は予算を組むことさえできなくなってしまうかもしれない。

ロゴフ教授は、最近のビットコインの急騰についてもコメントを求められている。
教授は一貫した懐疑派であり、今も変わっていない。

「最終的な問題は利用のされ方だ。
ビットコインに価値があるのは、単に人々がそう思っているからに過ぎない。
これはバブルであり、破裂することになろう。」

では、なぜバブルは破裂するのか。
ロゴフ教授は1つのシナリオを挙げる。

「各国政府は匿名に近い大口取引を許さないだろうから、禁止されるだろう。
規制が入り、政府が勝つ。
技術がどうのなんて関係ない。」

多くの暗号資産が規制によって息の根を断たれるとのシナリオは、かなり広く浸透してきている。
そこにブロックチェーンがどうといった話は関係ない。
単純に投機熱が冷めるというシナリオに加えて有力な予想だろうし、多くの暗号資産の投機家たちはそれらを承知の上で投機を楽しんでいるはずだ。

ロゴフ教授は、ビットコインに1つの使い道を見出している。

ビットコインは破綻した国家で使われるかもしれない。
暗黒の未来では何か利用法がありそうだ。・・・
長い目で見れは使い道などなく、バブルは弾ける。
有用な使い道などないことを祈っているが、ビットコインは暗黒時代到来に対するヘッジになる。

なんとも皮肉な話だ。
今ビットコインを買っている人たちの中に、自国が破綻した時のために買っている人などほとんどいないだろう。
多くは、いつまでもそこそこ国が栄えていることを前提に、手っ取り早くギャンブルで儲けたいと思っているはずだ。


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