国内経済

渡辺努教授:もはやGDPは使えない

過大な経済刺激策が続いてきた?

ここで渡辺教授が明言しなかった部分について勘ぐっておこう。


今の政策はもしかしたらものすごく間違ったことをやっているかもしれない

という疑問が仮に当たっているとすれば、それは何を表しているのだろう。
まず経済政策全般については明らかだ。
日本経済・世界経済はGDPで見るほど低成長でなく、むしろ良好な成長を遂げているということを示唆している。
さらに、過度な経済刺激策がこの20年ほど継続してしまった可能性も示している。
これは中央銀行にあってはバランスシートの無意味な拡大をもたらし、中央政府においては過大な財政支出による債務膨張を意味する。

もたらされるデフレは悪なのか?

次に物価はどうだろう。
価格ゼロ経済が拡大すれば、それと競合する有料の財・サービスの価格は通常下落する。
また、ゼロあるいは効用より低い対価しか受け取らない場合が多いため、競争力が高い。
結果、有料の財・サービスは価格低下を強いられるが、それでも販売量は減ってしまうだろう。
明らかなことは、価格ゼロ経済がデフレ要因となることだ。

さらに、価格ゼロ経済は物価指数に取り込まれていない。
仮に極めて廉価な価格ゼロ経済を物価指数に取り込むと、価格ゼロ経済の拡大とともに物価指数は劇的に低下することになるだろう。
これは、私たちがデフレを過小評価してきた可能性を示唆している。
物価統計の対象外ですさまじいダンピングがなされているようなものであり、消費者はその恩恵を受けてきた。
仮にデフレが総合的に見て悪だとすれば、経済刺激策が過小だったとの論理になる。
この論理は正しいだろうか。

価格ゼロ経済とは、技術革新による生産性向上、財・サービスの機能向上の極端な例かもしれない。
あるいは、低廉な経営資源に恵まれた新興国への拠点移動にも似ている。
いずれの場合も新たに導入される廉価で機能性に優れた財・サービスが国内市場の需給を緩ませ、デフレ圧力となりうる。
では、技術革新や海外移転は悪とすべきだろうか。
それらがもたらすデフレ圧力を打ち消すために長く経済刺激策を継続すべきなのか。
Yesのようでもあり、Noのようでもある。
一つ言えるのは、政府・日銀の懐次第という側面があることだろう。

(次ページ: 効用と物価指数が逆相関する)


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