国内経済

渡辺努教授:もはやGDPは使えない

もはやGDPは使えない

「GDPが広く利用されている理由は、人々の満足度・効用とほぼ同じように動くからだと考えられてきた。」


この理屈が成り立ちにくい「価格ゼロ経済」が社会で拡大しつつある。
それなのに、政策決定のプロセスではGDPは依然として重要な位置づけを保っている。
渡辺教授は、価格ゼロ経済についても十分に目配せして政策運営にあたるべきと説く。

市場経済だけを見てやると歪みが出て来てしまう。
今の政策はもしかしたらものすごく間違ったことをやっているかもしれない。

すごく間違っているのかどうかの決め手は、Googleの例で示されたようなズレがマクロのレベルでどの程度大きいかによる。
これについて渡辺教授は公研への寄稿で米政府での取り組みを紹介している。
それによれば「これまで発表された複数の推計結果を見る限り、GDPの上振れ幅はごく僅かだ」という。
その理由こそが、Googleについて指摘された効用1,500億ドルと付加価値(360億ドルの一部)の乖離であり、渡辺教授は「上振れ幅」は無視できないと考えている。

ICTの技術革新がこの共変性を崩したとすれば効用の代用品としてGDPを使うことは最早できない。

価格ゼロ経済の効用の測り方

では、価格ゼロのサービス・財について、効用を計測するにはどうすればよいか。
渡辺教授は番組でWTP(Willingness-to-Pay、支払意思額)という手法を紹介している。
これは、ある財・サービスが1年間使えなかったらどれだけ困るかアンケートで金額表示させ集計したものだ。
ある研究によればICTの果実である検索エンジンで16,629ドル、電子メールで6,896ドル、SNSで188ドルだった。
これに対し、シリアル(食品)は48ドルに過ぎなかったという。

いかにシリアルが米家庭の朝食の定番とは言え、少々切り取り方が狭いような気はする。
シリアルではなく、炭水化物の食物と聴いていれば、結果はもう少し変わっただろう。
それでも、検索エンジンとシリアルの間の346倍の差は埋まらないかもしれない。
人々にとっての効用がモノからコトへ移ってきており、ICTがそれにうまくマッチしているのであろう。
確かにこうした変化をGDPは取り込めていない。

渡辺教授は満足度・効用の数値化のやり方について、GDPがそうであったように、今後も改善を続けなければいけないという。

(次ページ: 過大な経済刺激策が続いてきた?)


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