ブラックロック
 

減速であって後退ではない:ブラックロック

資産運用の世界最大手BlackRockが、世界経済の鈍化を予想した。
一方で、景気後退入りのリスクは限定的で、金融市場は過度に悲観していると指摘している。


「私たちは2019年に米経済が減速すると予想している。
経済は、景気後退前の最終期である、景気サイクル終期へと入っていくだろう。」

ブラックロックが自社ブログで景気サイクルの予想を公表している。
同社は、米経済が牽引役でなくお荷物になっていくにしたがい、世界経済の成長鈍化が深まると予想する。
米政治の不確実性、貿易戦争、財政刺激策の反動、金融環境の引き締まりなどが米経済を鈍化させるという。
ただし、「鈍化」に対して過剰反応すべきでないとも書いている。

2019年の景気後退入りリスクは限定的だ。
次の景気後退はおそらくまだ先だろう。
おそらく数年先だが、そう長い先ではない。

ブラックロックの意見は、市場が景気動向に対して過度に悲観しているというもの。
金融システムの脆弱性は相対的に低下しており、インフレ昂進が心配されるような経済環境でもないため、FRBをはじめとする各国の中央銀行には金融緩和を続ける選択肢が残っていると指摘。
ブラックロックでは
・FRB: 年後半まで利上げを停止
・ECB: 利上げを2020年まで待つ
・中国人民銀: 各種緩和策を実施
と予想しているという。

つまり、経済は鈍化するが、後退はしないという話だ。
世の中の多くの人が《加速》では大喜びするわりに《鈍化》では問題視しようとしない。
そんないい加減さを見越してか、市場の慎重姿勢は消えない。
仮に今が景気サイクルの終期なら、株価は《心配の壁を登る》過程なのだ。
だから、心配するのも正しいし、まださらに壁を登る可能性を見るのも正しい。

数年後に米経済が景気後退入りするとして、米国株がいつ下落を始めるかを考えておかないといけない。
浜町SCIの調べでは、過去4回の米景気後退期で株式市場は単純平均8.5か月程度の先行性を示している。
ブラックロックが言った「数年先」を仮に2-3年とすれば、あと1-2年は米国株の本格的な下落が起こらない可能性もある。
むしろ、この間に《最後のひと上げ》が起こる可能性もある。


では、株式市場より先に危険を察知すると言われる債券市場の予想はどうか。
下図が昨年初めと現在の米イールド・カーブだ。

米国債イールド・カーブ
米国債イールド・カーブ

このイールド・カーブに織り込まれている1年ものインプライド・フォワード金利を計算してみる。
横軸の年数先から始まる先物金利である。

米国債利回りの1年物インプライド・フォワード金利
米国債利回りの1年物インプライド・フォワード金利

例えば、昨年初め(青)時点での1年後からの1年物先物金利は2.0%超と読み取れる。
一方、現在の1年もの直物金利は(イールド・カーブのグラフから)2.6%と読み取れる。
つまり、昨年初の債券市場の予想に対し、1年もの金利は大きく上振れしたのであり、これが米市場の動揺の一因を示唆している。
インフレへの予想外の懸念が株価下落と金利上昇を引き起こしたともいえるし、金利上昇が株安の原因となった可能性もある。

現在のインプライド・フォワード金利を見る限り、低下はわずかしか予想されていない。
景気後退が来れば、ある程度は利下げもあろうから、1年金利はもっと大きく下げるはずだ。
つまり、債券市場はまだ景気後退を確信していない。
だからこそ、イールド・カーブが明確に長短逆転していないのだ。

こういうところを見ているから、市場関係者は景気後退が間近とは言えないのであろう。
ブラックロックの結論も時間軸を重視したものになっている。

米景気後退リスクは限定的だが、リスクは時間とともに上昇する。
金融市場は、ダウンサイド・リスクのほとんどを織り込んでおり、過度に悲観的だと考えている。


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