海外経済

深刻で時間がかかるW字回復:ローレンス・サマーズ
2020年4月21日

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が、コロナ・ショックからの経済回復に対して悲観的なスタンスにシフトしている。


数週間前に思っていたより、時間がかかり、もっと深刻だと思えてきた。・・・
回復はV字とはならず、L字ではないかもしれないがW字になるのではと感じている。

サマーズ氏がBloombergで、コロナ・ショックからの経済回復が容易ではないとコメントした。
小売、工業生産、失業などの経済データの悪化、デフォルト増による金融システムでの問題懸念、国際的問題などを理由に挙げた。
中でも、一度ロックダウンを解いたシンガポールが再ロックダウンに迫られたことを重く受け止めたようだ。
拙速な経済再始動がより問題を困難にしかねないためだ。
サマーズ氏は、ロックダウンに逆戻りすれば、経済・心理・政治的に困難が増すと心配している。

「(拙速は)とても深刻な間違いになるだろう。
特に、幅広く検査・接触追跡ができていないうちは。
まだそうした点はあまり進んでいない。」

サマーズ氏は、急ぎすぎて逆戻りするより、遅すぎる方がリスクが少ないと話す。

サマーズ氏は4月初め、コロナ・ショックからの立ち直りがかなり早くなる可能性に言及していた。
ところが、ここに来て考え方をかなり変えてきている。
シンガポールの再ロックダウンに加え、経済優先で再始動を急ごうとするトランプ政権のスタンスへの危機感なのだろう。
しかし、こうした悲観論は、現状の市場の回復とは真逆のようにも聞こえる。

「市場のメッセージを無視することは常に誤りだ。
一方・・・偽りの夜明けは株式市場変動の歴史においていたるところで見られる。
先行きの経済見通しに横たわるすべての困難を考えれば、今市場で起こっていることから過剰に安心するのは深刻な間違いだ。・・・
景気後退、この70年間で3倍の差で最も深刻な景気後退の底を迎える前に、景気後退がまだ続いているのに、株式市場が15%しか下落しておらず、今後も下落しないというのは奇妙だ。」

市場がエコノミストより賢いとする理由は何もない。
サマーズ氏のような優れたエコノミストと市場なら、市場の方が間違っている可能性も高いだろう。
しかし、そうだとしても、経済と市場を1対1で対応させるのは乱暴だ。
市場は経済を先読みしようとするし、市場を人為的に操作しようという力も存在するからだ。

特にFRBの介入については、サマーズ氏も承知している。
ジャンク債まで買い入れ始めたFRBが、じきに日銀のように株式まで買い入れるだろうと期待する人がいて、それが上げの圧力になっているという。
しかし、このロジックによって投資するのは賢明ではないとサマーズ氏は言う。

金融史において、政策によって市場をファンダメンタルズからしばらく乖離させることができた例は多い。
でも、それは永遠には続かない。・・・
米国の歴史における深刻な景気後退では毎回、間違いを犯す確率が大きかった。

もっとも、市場がこうした指摘を素直に全面的に受け入れることはないかもしれない。
サマーズ氏が趨勢的停滞論を唱える中でも、市場は史上最高値を更新し続けていた。
FRBの先回りが通用しなくなるという見方は、そもそも楽観的な米市場でどこまで広がりをともなって受け入れられるだろうか。
その是非は、コロナ・ショックが本当にこの70年で最悪なのか、3倍の差なのかにかかっているのだろう。


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