浜田宏一教授:マイナス金利は課税、やめた方がいい

仮想敵は債券ディーラー?

出口を過剰に心配する人は、国民全体の利害より債券ディーラーのことをより心配している人だ。

ここで浜田教授は2つの過ちを犯している。
一つは、この発言には品性のかけらも感じられないこと。
もう一つは、市場のことを何も知らない素人であることを露呈していることだ。


異次元緩和については、株式市場からの支持は大きかった。
株屋というのは手数料稼ぎであり、ストックを持たない。
目先の売買手数料をもたらしてくれる株高を歓迎するものだ。
一方で、金融市場の側はストック商売をしている人が多い。
結果、銀行や債券市場関係者は異次元緩和に懐疑的な人が多かった。
さらに、銀行・債券市場では異次元緩和により収益が大きく圧迫されたから、金融緩和を快く思っていない面もある。

もう少し敷延すると、株式・債券を問わず、長期投資家には慎重な意見が多い。
長くストックを持つため、金融緩和の出口まで気にかかるからだ。
株式市場では、セル・サイドがお祭り騒ぎを演じた反面、バイ・サイドには慎重な意見も見られた。

どうやら浜田教授は、債券市場を敵視しているようで、それが先述の発言につながったように思える。
ところが、債券ディーラーを心配するというのはまったくの筋違いだ。
債券ディーラーとは、ストックを持たないとは言わないが、基本的には右から左へ債券を動かす取引をしている。
こうした人たちは、出口が来て金利上昇が訪れると予想すれば、ポジションを閉じるか、(確信があるなら)ショートすればいいだけなのだ。


金融緩和は隠れた税金

ここで本当に心配すべきなのは、デュレーションの長い債券・債権を保有している投資家である。
具体的に言えば、年金・保険が真っ先に挙がるだろう。
さらには(永久債とのスワップをしない場合の)日銀もそれにあたる。
市場金利が上昇を始める中で、年金・保険が資産サイドで超低金利しか稼げないような事態を心配するのは、まさに国民全体を心配することに他ならない。

実はこうした歪みは出口の前、金融緩和の底ですでに起こり始めている。
18日の報道では、GPIFが資産を預ける信託銀行の負担するマイナス金利分の損失を肩代わりする方針と伝えられている。
これはまさに浜田教授が取りやめるべきと語った「資産を日銀に預ける金融機関への一種の『課税』」を年金、結局は国民が明示的に負担することを意味する。
そして、出口で年金・保険の収支が悪化するなら、これもまた幅広い国民にしわ寄せが及ぶことになる。

「債券ディーラー」などという見当違いの話をするのではなく、本質論に対して説得力のある説明をすべきだろう。
出口で本当に困るのは、デュレーションの長い債券を保有する投資家と、おそらく株式投資家である。
株式は極めて長いデュレーションの金融商品であり、低金利が解消するにつれ、どこかの段階で悪影響を受け始めるだろう。
ただし、現状の金融政策の隘路を考えれば、リスク資産がさらに上がると考えざるをえない。
それだけに、長期の株式投資家の心配は絶えないのだ。


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