海外経済

流動性の約束が無意味に:モハメド・エラリアン
2019年12月17日

アリアンツ首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、次の危機は先の金融危機とは異なる性質のものになるだろうと予想している。


金融危機が問題だったのは銀行が含まれていたためだ。・・・
今日私たちが直面しているのはそういう状況ではなく、別のことだ。

エラリアン氏がBarron’sのインタビューで、現在、世界経済が直面しているリスクについて語っている。
何らかの危機に銀行が関与している場合、支払・決済機能に支障が生じる。
みながカウンターパーティ・リスクを恐れ、金融取引を控えるようになり「市場ベースの経済全体が巻き込まれてしまう」のだという。
これが先のサブプライム/リーマン危機であり、欧州金融危機であった。
エラリアン氏は、現在こうした銀行システムが関与したリスクは大きくないと見ている。
評判は悪いが、危機後の米ボルカー・ルール等、世界的な金融規制強化によって、銀行システムのリスク・テイクが低減されてきたからだ。

では、目下の心配事とは何なのか。
エラリアン氏は、信用をつける側でなく投資をする側にリスクがあると指摘する。

システムがエンド・ユーザーに対して過剰な約束をしてしまっている。
流動性に制約が生じると、あるいは、流動性の中に非流動性が存在すると、約束したことが意味をなさなくなる。

エラリアン氏は、ハイイールド、新興国市場の社債、銀行ローンなど、本来流動性が低い資産クラスを例にリスクの所在を説明する。
流動性の低い資産クラスに対し、投資家が高い流動性を前提としてしまう錯覚が起こっているという。

「ハイイールドの分野は本来的に流動性が低い。
ETFの形でそれを提供するのはまったく愚かなことだ。
ETFは合理的なビッド/オファー・スプレッドで即時の流動性を約束している。
・・・背景にある現状の問題は過剰な流動性の約束だ。」

本来流動性が低い資産がETFとして売買されると、市場に流動性が溢れ市場が好調なうちは、あたかも流動性が高いように感じてしまう。
スプレッドはタイトで、投資家は売買するのに極めて小さな取引コストしか感じない。
しかし、一たび市場の流動性が退潮すると、裏付けの資産の売買が成り立たない、あるいはスプレッドが極めて大きくなってしまう。
こうした市場環境では裏付けの資産は往々にして急落し、ETFにも売りが殺到することになる。
ETFの投資家が流動性の低さを痛感するのはその時だ。

エラリアン氏は、こうした錯覚を生み出す主因となった各国の金融政策を批判する。
いや、中央銀行以外の当事者が中央銀行任せにしてきたことを批判している。

「長く続く過剰な中央銀行依存によるコラテラル・ダメージと意図せざる帰結がはるかに恩恵を超えていると心配すべき十分な証拠があると考えている。
・・・
私たちは、中央銀行の経済刺激効果が失われるだけでなく、反生産的になるような時点を迎えている。」

エラリアン氏は、流動性の枯渇をリスクと指摘しながら、金融政策依存にもNoを出している。
流動性枯渇を回避しつつ金融政策依存を脱するにはどうすべきなのか。
エラリアン氏は、金融政策中心の経済政策運営から包括的な成長政策パッケージへのバトンタッチが必要と説く。

「みんな必要なのはわかっている。
ストレスがたまるのは、エコノミストの大多数が方策を知っている。
政治の決断を得るのが、特に欧州において、困難なんだ。」


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