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グッゲンハイム スコット・マイナード 流動性、信用、広範な金融の問題への転化:スコット・マイナード
2022年5月4日

グッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナード氏が、突然の政策転換を繰り返すFRBを批判し、状況が危機に向かっているとの懸念を示した。


突然の方向転換だ。
以前FRBは、FF金利を2024年までゼロにとどめると言っていた。
それが突然、利上げする、インフレ退治のために積極的に利上げすると言い出した。

マイナード氏がCNBCで、定見がないようにさえ見えるFRBの政策運営を批判した。
「FRBは失敗したのか」との問いに「そうだ」と答え、財政赤字を金融政策で支援することにおいて「やり過ぎた」と話した。

ドジャーズの共同オーナーは恐ろしく広い肩を揺らしながら、現在までの経緯が第2次世界大戦とそれ以降に似ていると指摘した。
莫大な戦費を賄うため国債が発行され、それを支えるためにFRBが長期金利ターゲットを設定し、長期金利をペッグした時代だ。

たとえば、1946年にインフレは20%に上昇した。
1949年にはデフレに陥った。
FRBは引き締めを行わず、ただ貨幣増発を止めただけだった。

FRBは3月のFOMCで利上げを決定し、FF金利を25 bp引き上げた。
今月3-4日のFOMCでは利上げだけでなくバランスシート縮小の計画にも言及があると予想されている。

マイナード氏が1949年を引いた理由は、FRBがバランスシート縮小をしなくてもデフレのリスクがありうるということだろう。
仮に前回の金融引き締めサイクルと同様、バランスシート縮小を行えば、前回同様再び逆戻りしかねないとの心配だ。
マイナード氏は決してハト派ではない。
どちらかのレッテルを貼らなければならないなら、タカ派だ。
同氏が言いたいのは、経済や市場の持つ機能を政策によって阻害しすぎることへの批判だ。

「現在が仮に貨幣増発がなかった通常の状況なら、他の範疇で需要破壊が物価上昇を打ち消したはずだ。・・・
しかし、FRBの金融緩和が強すぎたために、物価水準が高水準に再調整されてしまい、元に戻らなくなった。・・・
そこで、この変化をいくらか反転させ元に戻そうという話だが、そうはならない。」

貨幣増発(政府の国債増発+中央銀行による買い入れ)がインフレの一因だからといって、それを巻き戻せば元に戻るというものでもないとの指摘だ。
政策を巻き戻しても物価の基調は高止まりし、良くない副作用に見舞われると警告している。
マイナード氏は、米経済が危機に向かう途上にあるという。

「モハメド・エラリアンは正しい。
流動性の問題は信用の問題に転化し、信用の問題は広範な金融の問題に転化する。」

では、マイナード氏は、FRBがどうすべきというのか。
同氏は、1970年代にFF金利による金融調整がインフレ昂進を招いた点を挙げ、FF金利のペッグをやめ、マネーサプライによる金融調節に移行すべきと説く。

「市場が適切な均衡金利を決めるのに任せることだ。
だから、『貨幣増発を止める』と言えばいい。
火に油を注ぐようなマネー増加をやめ、バランスシートをゆっくり縮小すると言えばいい。」

金利を無理に決めるのでなく、マネタリーベースを無理に縮小するのでもなく、自然に任せろというメッセージだ。
経済・市場が持つ機能を主役にすべきとの意見だろう。
マイナード氏は以前、ウィリアム・ダドリー ニューヨーク連銀総裁(当時)に
「中央銀行こそがすべての危機の原因であり解決策だ。」
と話したことがあるらしい。
一方でマイナード氏が経済・市場に完全なレッセフェール求めているようにも見えない。
(折にふれ(特に危機・混乱時に)当局が取り組むべき施策も口にしている。)
マイナード氏の主張はある意味、どんどんエスカレートしていく政策による経済・市場介入に対するアンチテーゼなのだろう。

マイナード氏といえば、米長期金利の超長期低下トレンドがまだ終わっていないと考える1人だ。
もはやこう考える人は少数派となったが、同氏はまだ考えを変えていない。
すぐにでも(以前当面のピークと考えていた)2.5%を割り込むと考えている。

奇妙なことだが、この金利低下予想はマイナード氏が最も恐れるシナリオと同期しているようだ。

私が心配するのは、FRBが貨幣増発を止めるだけでなく、需要破壊が始まり物価が横ばい・減速を始めそうな時に、急ブレーキを踏みギアをバックに入れることだ。・・・
彼らはインフレ・ファイターとしての信認をすべて失うだろう。

仮に一国から実効性のあるインフレ・ファイターがいなくなればどうなるか。
人々のインフレ期待は高まり、インフレ退治はどんどん困難になっていくだろう。


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