ハワード・マークス
 

永遠の景気拡大は使命ではない:ハワード・マークス

Oaktree Capitalのハワード・マークス氏が、FRBの金融政策を批判している。
FRBは本来の枠を踏み外しており、結果、社会の格差が拡大しているという。


景気拡大と強気相場がすでに史上最長である時、FRBがそれらを引き延ばそうとすることを喜ぶべきだろうか?
FRBは永続する繁栄を生み出し、永遠に調整を回避しようとすべきだろうか?
こうすることにリスクはないのか?
これはすべてどちらの物差しで測るかによる。

マークス氏が7月の「Memo」で投資家に問うた質問だ。
この質問をBloombergがマークス氏本人にぶつけている。
マークス氏は、自分が絶対正しいという自信を持っているわけではないと謙遜し、そのため問いかけの形にしたと明かした。
その上で、現在の状況が異常であると指摘した。

「通常、景気刺激策では、経済が弱い時に停滞から目覚めてほしいと願うものだ。
概して、10年間の良い期間の後に経済を刺激したりしない。
通常は、サイクルには満ち引きがあることを受け入れるもので、景気後退が正当化されるかもしれない。」

マークス氏は失業率が過去50年で最低水準にあると指摘。
こうした状況では通常景気刺激は行われないはずと話した。

問題は、FRBが景気を刺激できるかどうかではなく、そうすべきかなんだ。

マークス氏は、FRBの使命自体に疑問を呈しているのだ。
キャスターに促され、同氏はついに「すべきでない」と断言している。


FRBのデュアル・マンデートは完全雇用と物価の安定だ。
その完全雇用はすでにかなり前に実現している。
問題は物価の安定にある。
かつて、物価の安定とは、物価が跳ね上がらないようにすることだった。
しかし、今では物価上昇率2%を中心に上下に乖離しないことが目標とされている。
デュアル・マンデートは大きく変質したのだ。
結果、インフレが上昇しにくい構造的問題を抱える今、金融政策は緩和一方となる。

マークス氏は、FRBが物価以外にも自身の使命を誤解しているという。
同氏は、ジェローム・パウエルFRB議長、2007年9月のFRB議長など、FRB議長に共通する、ある発言を問題視する。

「FRB議長がよく言うのは・・・『私たちは、景気拡大を継続させるために必要なことを行う。』
景気を永遠に拡大させるのがFRBの仕事だとは私は思わない。」

マークス氏が思い描く中央銀行のあるべき姿は、市場の本来の動きを生かすやり方だ。
オーバーシュートやアンダーシュートにだけ対応し、あとは市場の力にゆだねるやり方だ。

もしも私がFRB議長だったら・・・経済が過熱している時インフレが起こらないよう冷却しようとする。
経済が本当に弱く、雇用が生まれない時に、それを促すために刺激策を講じる。
しかし、その中間では放っておく。

マークス氏は、行き過ぎた金融緩和が預金者・貸し手・マネー保有者のリターンをむしばんでいると指摘する。
一方で、金利低下が資産価格を膨張させるとも指摘する。

だから、資産家の富は積み上がり、リターンを得るのにわずかな預金しか持たない人たちはつらい思いをするんだ。

マークス氏の本業はディストレストだから、景気後退が来ないのは商売に差し支えるという面もある。
これは多くのバリュー投資家にも共通することかもしれない。
しかし、その分を割り引いても、マークス氏の指摘がもっともに聞こえるのは、やはり政策のフレームワークにバランスの悪さが存在するのではないか。
デフレ・スパイラルに陥らないためという免罪符で何でもやってきたこと、今も続けていることに疑問を感じる人は意外と多いのではないか。


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