アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、市場株価の上昇が企業の価値に及ぼす仕組みを解説し、GameStop騒動の問題点を説明している。
いつも私が書きたいと思っているテーマは、価格と価値の間のフィードバックループの可能性だ。・・・
換言すれば、株価を上げれば価値が上がり、逆に価格を下げれば価値が下がるといったフィードバックループはありうるだろうか?
ダモダラン教授が自身のブログで、株価が企業の価値に影響を及ぼしうるケースについて書いている。
ダモダラン教授が今これを書くのはある意味必然だった。
この疑問は、GameStop騒動に関連して提起される命題だからだ。
一般投資家がプロに仕返ししたいなら自由にすればよい。
その過程でルール違反があれば、ルールにしたがい罰せられればよい。
そこで残るのが、ファンダメンタルズを大きく超えた株価とその調整過程だ。
ここで多くの買い方が悲鳴を上げたはずだ。
では、当初に売り方、その後に買い方が悲鳴を上げたこのプロセスにはどのような社会的意義があるのだろう。
ここでの論点は2つになるだろう。
- 適切な罰がプロに適切に与えられたのか。
- 株高そのものに社会的意義があるのか。
この後者の観点に注目したのがダモダラン教授の自問だ。
もしも価格を吊り上げること自体が価値を向上させるなら、それが正当化の材料になりうるかもしれない。
ダモダラン教授は、フィードバックの可能性を3つの層に分けて論じている。
- 認識: 株価上昇によって債務の条件が改善したり、従業員を採用しやすくなる。
- 内在効果: 株価上昇でCBの行使価格が上昇したり、行使されることで財務が改善する。
ストック・オプションの報酬のある企業では退職率に影響する。 - 顕在効果: 株価上昇で増資価格が上がり、多くのキャッシュが得られる。
興味深いのは、この3層について渦中のGameStopとAMCのケースを検証している点だ。
- 認識: 一過性。
- 内在効果: AMCではCBが転換され財務が改善する。
「Redditでウォール街にリベンジするといっていた人たちにとっては無意味だったろう。
転換で最大の恩恵を受けたのは、AMCが苦境にある時にその債券に投資したヘッジファンド シルバー・レイクだ。」 - 顕在効果: AMCは増資の目論見書を提出ずみ。
つまり、AMCにおいて対象の価値の増大が見込めるようだ。
しかし、シルバー・レイクもなかなかの利益を上げたようだ。
ヘッジ・ファンドなどのプロは売りと買いの両側にいるものだ。
果たして、罰は適切に与えられたのだろうか。
ダモダラン教授は、買い方の抱くウォール街への憤りに一定の理解を示しながらも、問題点を挙げている。
ヘッジファンド、例えばGameStopのショート・セラーを傷つけ、シルバー・レイクなど他の投資家を助けたとしても、これらファンドの投資家が勝ち組から負け組に資金を移動するだけだ。
だから、ファンドに対する最良のリベンジとは、投資家全体にファンドから資金を引き揚げさせることだ。
ファンド全体がアンダーパフォームすれば、それが起こる。