海外経済

構造変化についていけない末路:モハメド・エラリアン

アリアンツ経済顧問のモハメド・エラリアン氏が、現在進行している構造変化・行動変化を見逃せば中央銀行や投資家は大きな間違いを犯しかねないと警告している。


「(インフレが一過性との)ナラティブに固執し、長くしがみついてしまった。
結果、インフレはFRB予想より高く、幅広く、長いものとなっている。
今回のFRBのインフレ予想は、後の歴史において『FRBで最悪のインフレ予想』と呼ばれることになろう。」

エラリアン氏がBloombergで、FRB批判を強めている。
エジプト生まれのエコノミスト/ビジネスマンは日頃つとめて紳士だが、今回のインフレ論議ではFRBへの批判をいつになく強めている。
企業との会話の中から、経済・社会の構造変化・行動変化を嗅ぎ取っている。
自身の予想が間違っていることを望むがそうはならないだろうと、なかなかの自信ぶりだ。
FRBには「開かれた考え方」がなかったとし、インフレ高止まりの可能性を否定すべきでなかったと厳しい。

心配なのは、テーパリング終了と利上げの間の期間が十分でなくなる、あるいは同時進行する期間ができてしまうことだ。・・・
さらに、FRBは利上げペースを速くせざるをえなくなることだ。

エラリアン氏はこれまでも、もっと早く金融政策正常化を始めるべきだったと主張してきた。
しかし、現実は経済に悪材料が出始めた今になってブレーキを踏み始めようとしている。
これが経済・市場をオーバーキルしてしまうのではないか。
同氏は、これを回避するため12月のFOMCで公表済みのテーパリングの内容を加速させるべきと提案する。

一方でエラリアン氏は、来年半ばに発生するかもしれないリスク・シナリオも明かしている。
「金融引き締め、金融環境の引き締まり、貯蓄減少による家計の引き締まり、財政刺激策の縮小」だ。
皮肉なことだが、エラリアン氏の提案はリスク・シナリオの発現確率を高めてしまうかもしれない。

エラリアン氏は、インフレ高止まりの要因を3つの要素に分けて考えているようだ。
1つは、政策対応により高まった需要であり、これは時間とともに冷めていく。
2つ目は供給制約であり、これは需要よりゆっくりと解消していく。
もう1つ注意しないといけないのはインフレ期待の変化だ。

私たちは、目先の緊急事態をやり過ごしたところで、緊急事態レベルの金融政策の状態から始めようとしている。
もしも、この金融政策ベタ踏みを続ければ、インフレ期待を不安定化させてしまう。

エラリアン氏は、リーマン危機後と現在の違いを端的に説明した。
前回は 総需要<総供給 だったが、今回は 総需要>総供給 となっている。
同氏は、多くの人の考えが、前回に引っ張られていると指摘する。
エラリアン氏はPIMCOのCEOを務めていたリーマン危機後に提唱し、債券王ビル・グロス氏とともに広めたニューノーマルについての昔話をしている。
ニューノーマルという考えは現在とはむしろ逆方向の変化を示すものだったが、この時も考え方を変えられずに投資等の判断を誤った人が多く存在したという。

「『注意しろ、これはニューノーマルで、趨勢的な力が働いている』と言った時、サイクルの考え方に取りつかれた人はみな否定した。
考えかたを変えるのには4年かかった。
そして、生活水準を維持する最高の機会を失ったんだ。」


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